保険・お金のコラム

60歳から医療保険はいらない?必要性の判断基準と代わりになる備え方

定年を迎える前後になると、これまで払い続けてきた医療保険を続けるべきか迷う人が増えます。医療保険はいらないという意見を目にして、判断に困っているという声も少なくありません。

結論を先に言えば、いる・いらないは年齢だけで決まるものではありません。貯蓄がどれだけあるか、公的医療保険のどの区分に該当するか、家族構成はどうかによって答えは変わります。

この記事では、いらないと言われる根拠を整理したうえで、それでも必要になるケース、判断の基準、加入しない場合の備え方まで順番に見ていきます。自分の状況に当てはめて考える材料にしてください。

確認したいポイント 結論 詳細
60歳から医療保険はいらない? 貯蓄額しだいで判断が分かれる 公的制度で自己負担に上限があるため、貯蓄で賄えるなら不要という考え方も成り立ちます。
公的保障だけで足りる? 対象外の費用は自己負担 差額ベッド代や食事代、先進医療の技術料は高額療養費の対象になりません。
必要かどうかの判断基準は? 医療費用の貯蓄があるか 100万円前後を医療費専用の資金として確保できているかが、ひとつの目安になります。
加入するなら何を選ぶ? 入院一時金を軸に絞り込む 保険料が上がる年代なので、必要な部分だけに絞った設計にすることが大切です。

 

この記事でわかること

  • 60歳から医療保険はいらないと言われる4つの根拠と、その妥当性
  • 公的医療保険でカバーされない費用と、2026年8月の制度改正の内容
  • 貯蓄額から必要性を判断するための具体的な手順
  • 加入しないと決めた場合に、代わりにやっておきたい準備
  • 加入や継続を選ぶ場合の、保険料を抑えた設計の考え方

 

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医療保険が必要かどうかは、貯蓄額と公的保障の内容を照らし合わせないと判断できません。加入中の契約を持ち込んでいただければ、その場で整理できます。

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60歳から医療保険はいらないと言われる理由

不要論には、それなりの根拠があります。感情論ではなく、公的制度と保険料の仕組みから導かれた主張です。

まずは、その根拠を4つに分けて確認します。理由を理解しておくと、自分に当てはまるかどうかを判断しやすくなります。

高額療養費制度で自己負担に上限がある

公的医療保険には高額療養費制度があり、1か月の医療費の自己負担が上限額を超えた分は払い戻されます。上限額は年齢と所得によって決まります。

たとえば69歳以下で年収が約370万円から770万円の区分であれば、医療費が100万円かかっても窓口での実質負担は10万円弱にとどまります。3割負担の30万円をそのまま払うわけではありません。

さらに、直近12か月に3回以上上限額に達した場合は4回目から上限が下がる多数回該当という仕組みもあります。長期の治療でも青天井にはならない設計です。

60歳以降は保険料が割高になる

医療保険の保険料は年齢が上がるほど高くなります。60代で新たに加入すると、30代や40代で加入した場合の数倍の保険料になることも珍しくありません。

これは、その年代の人が入院する確率が高いためです。保険料は統計に基づいて計算されているため、給付を受ける可能性が高い人ほど負担も大きくなります。

払い込む保険料の総額と、受け取れる給付金の見込みを比べたとき、差が縮まっていくのがこの年代です。保険としての効率が下がるという指摘には一定の合理性があります。

入院日数は短期化している

医療技術の進歩や診療報酬の仕組みの変化によって、入院期間は短くなる傾向が続いています。日帰りや数日で退院するケースが増え、長期入院は減っています。

入院日額型の保険では、日数が短いほど受け取れる給付金も少なくなります。日額5,000円の保険で3日間入院しても1万5,000円にしかならず、保険料に見合わないという見方が出てきます。

一方で、治療の中心が通院に移っているため、入院給付金だけでは実際の費用を賄えないという別の問題も生じています。

貯蓄で代替できるという考え方

医療保険は、貯蓄が足りない期間の穴を埋めるための手段だという整理の仕方があります。十分な貯蓄があるなら、保険料を払わずに自分で備えたほうが効率的という考え方です。

月5,000円の保険料を20年払えば総額120万円になります。この金額を貯蓄しておけば、複数回の入院に対応できる計算です。給付の条件に縛られず、どんな用途にも使える点も利点になります。

退職金を受け取り、住宅ローンの返済も終わっているなら、この考え方が現実的な選択肢になります。

 

それでも医療保険が必要になるケース

不要論には根拠がある一方で、すべての人に当てはまるわけではありません。公的制度でカバーされない部分は確実に存在します。

必要性が高まる4つの場面を見ていきます。

高額療養費の対象にならない費用がある

高額療養費制度が対象とするのは、保険が適用される診療の自己負担分だけです。入院時の食事代、差額ベッド代、先進医療の技術料は対象外で、全額が自己負担になります。

差額ベッド代は1日あたり数千円から1万円を超えることもあり、個室を希望すれば入院日数分がそのまま積み上がります。家族の見舞いにかかる交通費や、身の回りの日用品費も同様です。

生命保険文化センターの2025年度の調査では、直近の入院時の自己負担費用は平均18万7,000円、1日あたり平均24,300円となっています。高額療養費制度があっても、この程度の出費は発生するということです。

出典:公益財団法人 生命保険文化センター「入院費用(自己負担額)はどれくらい?」

自己負担の上限額は引き上げられた

高額療養費制度は永続的に同じ内容が続くわけではありません。2026年8月の診療分から、自己負担限度額が全所得区分で引き上げられました。

69歳以下で年収約370万円から770万円の区分では、従来の月額8万100円に一定率を加えた計算式が、8万5,800円を基準とする計算式に変わっています。あわせて、8月から翌年7月までの1年間を対象とする年間上限額が新たに設けられました。

2027年8月からは所得区分のさらなる細分化も予定されています。今後も公的保障が拡充される方向ではないという前提で考えておくほうが安全です。

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」

収入が年金中心に変わる

現役時代であれば、突発的な出費を月々の収入から補うことができました。年金生活に入ると、収入が固定されるため、想定外の支出を吸収する余地が小さくなります。

入院や手術が重なると、貯蓄を取り崩すことになります。取り崩した分を働いて埋め合わせることが難しい点が、現役時代との大きな違いです。

医療費のために老後資金を減らしたくないという考え方であれば、保険料という形で負担を平準化する意味は残ります。

介護や認知症のリスクが重なる

60代以降は、病気やけがだけでなく、要介護状態になるリスクも視野に入ってきます。公的介護保険には自己負担があり、住宅改修や介護用品の費用も発生します。

医療保険の中には、三大疾病で所定の状態になったときに以後の保険料が免除されるものや、介護状態に対応した特約を付けられるものもあります。

医療保障だけを単独で考えるのではなく、介護も含めた備えとして全体を設計すると、必要な保障が見えやすくなります。

退職すると傷病手当金がなくなる

会社員として健康保険に加入している間は、病気やけがで働けない期間について傷病手当金を受け取れます。退職して国民健康保険に移ると、この給付は原則としてなくなります。

60歳以降も再雇用などで働き続けるつもりなら、この違いは無視できません。収入が途絶えたときの支えが一段薄くなるためです。

退職時に在職中から受給していた場合など、条件を満たせば継続して受け取れるケースもあります。加入している健康保険の窓口で確認しておいてください。

 

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所得区分によって自己負担の上限は変わります。実際の数字を出したうえで、不足する分をどう埋めるかを一緒に検討できます。

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必要かどうかを判断する基準

一般論では答えが出ません。判断の軸になるのは、医療費に充てられる貯蓄がどれだけあるかという一点です。

次の手順で確認してみてください。

用意しておきたい金額の目安

入院1回あたりの自己負担が平均18万7,000円という数字を踏まえると、複数回の入院に対応するには100万円前後を医療費用として確保しておくのがひとつの目安になります。

がんなど治療が長引く病気では、通院や薬剤の費用が数年にわたることもあります。余裕を見るなら200万円程度を想定しておくと安心度が上がります。

この金額を、生活費や旅行費とは別枠で確保できているかどうか。ここが判断の分かれ目になります。

セルフチェックの手順

まず、現在の貯蓄額から、生活費の半年分と使い道が決まっている資金を差し引きます。残った金額が医療費に回せる金額です。

次に、今払っている医療保険の保険料を確認し、これから何年払い続けるといくらになるかを計算します。65歳までなのか終身なのかで総額は大きく変わります。

医療費に回せる金額が目安を上回っていて、かつ保険料の総額が大きいなら、いらないという判断に傾きます。逆であれば、保障を残す意味があります。

夫婦の場合は世帯単位で考える

夫婦のどちらか一方だけを見て判断すると、全体像を見誤ります。二人が同時期に入院する可能性も含めて、世帯としての備えを確認してください。

同じ医療保険制度に加入している家族の医療費は、高額療養費の計算で合算できる場合があります。世帯合算の仕組みを踏まえると、想定より負担が小さく済むこともあります。

一方で、遺された側の生活費まで考えると、医療費用の貯蓄を厚めに見ておく必要が出てきます。

 

いらないと判断した場合の備え方

医療保険に入らないという判断は、何も備えないという意味ではありません。保険料を払わない分、自分で仕組みを用意しておく必要があります。

最低限やっておきたい3つを挙げます。

医療費用の資金を分けて管理する

生活費の口座と同じところに置いておくと、いつの間にか使ってしまいます。医療費専用として別の口座に分け、手をつけないルールを決めておくことが大切です。

すぐに引き出せる形で置いておく点も重要です。投資に回してしまうと、必要なときに値下がりしていて取り崩せないという事態が起こります。

金額の目安を決めて、退職金の一部をこの枠に配分しておくと管理しやすくなります。

窓口負担を抑える手続きを知っておく

高額療養費は後から払い戻される仕組みですが、マイナ保険証を利用すれば、窓口での支払いを最初から上限額までに抑えられます。

マイナ保険証を使わない場合は、事前に限度額適用認定証の交付を受けておく方法があります。加入している健康保険組合や市区町村の窓口で申請できます。

入院が決まってから慌てないよう、手続きの流れだけでも把握しておいてください。

加入している健康保険の付加給付を確認する

大企業の健康保険組合では、法定の高額療養費に上乗せする付加給付という独自の制度を設けていることがあります。自己負担が月2万円程度で済むケースもあります。

退職後に国民健康保険や後期高齢者医療制度へ移ると、この付加給付はなくなります。任意継続を選べば一定期間は継続できる場合もあるため、退職前に確認しておく価値があります。

自分がどの制度に加入していて、どこまで保障されるのか。これを把握しないまま保険の要否を判断することはできません。

医療費控除を使えるようにしておく

1年間に支払った医療費が一定額を超えると、確定申告で医療費控除を受けられます。世帯で合算でき、通院の交通費や薬局で買った市販薬も対象になるものがあります。

保険から給付金を受け取った場合は、その分を医療費から差し引いて計算する点に注意してください。保険に入っていないほうが控除額は大きくなるという関係になります。

領収書は5年間保管しておく必要があります。年の途中から意識して集めておくと、申告のときに慌てずに済みます。

 

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続けるか解約するかを決めるには、これから払う保険料の総額を把握することが欠かせません。条件を入力すれば、目安をその場で確認できます。

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加入や継続を選ぶ場合の設計

必要と判断した場合も、保障を厚くしすぎないことが大切です。この年代は保険料が上がるため、絞り込んだ設計にしないと負担が重くなります。

押さえておきたい4つの視点を整理します。

入院一時金を軸に組み立てる

入院が短期化している現状を踏まえると、日数に応じて受け取る日額型よりも、入院した時点でまとまった金額を受け取れる一時金型のほうが実態に合っています。

5万円や10万円の一時金があれば、短い入院でも差額ベッド代や交通費を賄えます。日額型と組み合わせる場合も、日額は低めに設定して保険料を抑える方法があります。

通院給付金や、退院後の治療に対応する保障があるかどうかも確認してください。

保険料の払い方を決める

保険料の払い方には、一生涯払い続ける終身払と、一定の年齢までに払い終える短期払があります。月々の負担は終身払のほうが軽く、総額では短期払のほうが抑えられるのが一般的です。

60代から加入する場合、短期払にすると月々の保険料がかなり高くなります。年金生活に入ってからも払い続けられるかを考えると、終身払を選ぶほうが現実的なケースが多くなります。

ただし長生きするほど総支払額は増えます。どちらが有利かは何歳まで払うかによって変わるため、両方の総額を試算して比べてください。

先進医療特約の扱い

先進医療の技術料は公的医療保険の対象外で、種類によっては数百万円かかることがあります。先進医療特約は月額数百円程度で付けられることが多く、費用対効果の面では検討する価値があります。

ただし該当する治療を受ける可能性は高くありません。対象となる技術や実施医療機関は限られており、誰でも使えるものではない点は理解しておいてください。

すでに加入している保険に付いているかどうかを、まず確認することから始めましょう。

持病がある場合の選択肢

60代になると、健康診断で指摘を受けていたり、通院中の持病があったりする人が増えます。通常の医療保険に加入できない場合でも、引受基準緩和型という選択肢があります。

告知項目が少なく加入しやすい一方、保険料は割高に設定され、加入から一定期間は給付金が削減される商品もあります。条件を確認したうえで判断してください。

持病があっても通常の商品に加入できる場合もあるため、緩和型を選ぶ前に一度は通常の商品で申し込んでみる価値があります。

 

すでに加入している保険を見直すとき

新規加入より判断が難しいのが、長く続けてきた契約をどうするかです。古い契約ほど、今の医療事情に合っていない可能性があります。

解約を決める前に確認したい点を挙げます。

給付の条件を確認する

20年以上前に契約した医療保険では、入院給付金の支払開始が5日目からといった条件になっていることがあります。短期入院が中心の今では給付を受けにくい設計です。

また、1回の入院で支払われる日数の上限や、通算の限度日数も確認してください。これらの条件しだいでは、保険料を払い続けても給付を受けられる場面が限られます。

契約内容が分からない場合は、保険会社に照会すれば確認できます。証券番号を用意しておくとスムーズです。

解約する前に確認したいこと

貯蓄性のある保険に医療特約が付いている場合、特約だけを外して主契約を残せることがあります。契約全体を解約すると、有利な部分まで失うことになりかねません。

また、新しい保険への切り替えを考えているなら、新契約の保障が始まってから今の契約を解約してください。健康上の理由で新規加入できず、無保険の期間が生じるおそれがあります。

保険料の負担が理由なら、保障額の減額や特約の削除で対応できないかも検討してみてください。

見直しに適したタイミング

定年退職、年金の受給開始、住宅ローンの完済といった節目は、家計の収支が変わるタイミングです。このときに保険全体を点検すると、無駄が見つかりやすくなります。

死亡保障が過剰になっていることも多く、そこを減らして医療保障に振り替えるという組み替えも選択肢になります。

なお、この記事の内容は一般的な考え方を整理したものです。個別の契約や治療にかかる費用については、保険会社や医療機関、加入している健康保険の窓口で確認してください。

共済に切り替えるという選択肢

保険料を抑えたい場合、都道府県民共済やこくみん共済に切り替える方法もあります。掛金が一定で分かりやすく、決算後に割戻金が戻ってくる仕組みが特徴です。

ただし注意したいのが、多くの共済では65歳や70歳を境に保障内容が段階的に縮小するという点です。年齢が上がるほど給付額が下がるため、生涯にわたる保障には向きません。

何歳まで、どの程度の保障が続くのかを必ず確認したうえで、民間の保険と比べてください。掛金の安さだけで決めると、必要な時期に保障が薄くなっていることがあります。

 

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古い契約は給付条件が今の医療に合っていないことがあります。証券を持ち込んでいただければ、続けるべきか整理すべきかを一緒に判断します。

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まとめ

60歳から医療保険がいらないと言われるのは、高額療養費制度で自己負担に上限があること、保険料が割高になること、入院が短期化していること、貯蓄で代替できることが理由です。どれも根拠のある指摘です。

一方で、差額ベッド代や食事代は高額療養費の対象外であり、入院1回あたりの自己負担は平均18万7,000円かかっています。2026年8月には自己負担限度額が引き上げられ、公的保障は縮小の方向にあります。

判断の軸は、医療費に充てられる貯蓄が100万円前後あるかどうかです。確保できているなら不要と考えられますし、そうでなければ保障を残す意味があります。

いらないと判断した場合も、医療費用の資金を分けて管理し、窓口負担を抑える手続きを知っておくことが欠かせません。迷う部分があれば、契約内容と家計の数字を持って専門家に相談してみてください。

 

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