団信は糖尿病でも通る?告知で必要な数値とワイド団信・フラット35の選び方
健康診断で糖尿病を指摘され、治療を続けている。そんな状況で住宅の購入を考えるとき、多くの方が気にするのが団体信用生命保険(団信)の審査です。
糖尿病は、団信の告知でほぼ確実に記入が必要になる病気です。ただし、病名を書いたら即座に断られるというものでもありません。数値が安定しているか、合併症があるか、治療の内容はどうかによって、判断は分かれます。
この記事では、告知で何をどこまで書くのか、通らなかった場合にどんな道があるのか、返済中に糖尿病になった場合どうなるのかを順に整理します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
| 糖尿病だと団信は通らない? | 状況によっては通ることがある | 病名だけで決まるわけではなく、数値が安定しているか、合併症があるかによって判断が分かれます。 |
| 告知では何を書く? | 数値・投薬・合併症まで記入する | HbA1cや空腹時血糖値、薬の名前、インスリン治療の有無、合併症の有無まで求められます。 |
| 断られたらどうする? | ワイド団信やフラット35を検討 | 引受の基準を緩めたワイド団信のほか、団信への加入が任意のフラット35という選択肢があります。 |
| 返済中に発症したら? | 原則は自分で返済を続ける | 糖尿病そのものは支払いの対象になりにくく、合併症の程度によって扱いが分かれます。 |
この記事でわかること
- 住宅ローンの審査と団信の審査がどこで分かれているのか
- 告知書で求められる数値や治療内容と、合併症が判断に与える影響
- 通常の団信で断られた場合に検討できる4つの選択肢
- 上乗せ金利の実際の負担額と、団信なしで借りる場合の備え方
- 返済中に糖尿病や合併症が進んだ場合に使える制度と相談の順序
| 健康状態に不安がある場合の住宅ローンもご相談いただけます 団信の引受基準は保険会社ごとに異なり、同じ数値でも結果が変わることがあります。複数の商品を扱う立場から、通る可能性のある道筋を一緒に探します。 |
糖尿病と住宅ローン審査の関係
最初に、どこで何が判断されているのかを整理します。ここを取り違えると、対策の方向がずれます。
ローンの審査と団信の審査は別
住宅ローンの審査で見られるのは、年収、勤続年数、他の借入の状況、購入する物件の担保としての価値などです。健康状態そのものは、ローン本体の審査項目ではありません。
健康状態が関わるのは団信の審査です。多くの金融機関が団信への加入を融資の条件にしているため、団信に入れないと結果としてローンが組めない、という流れになります。
裏を返せば、団信の加入が必須でない商品を選べば、健康状態の影響を小さくできるということです。この点は後の見出しで扱います。
糖尿病が慎重に見られる理由
保険会社は、加入を引き受けるかどうかを将来の給付の見込みから判断します。糖尿病は、進行すると網膜症、腎症、神経障害といった合併症につながり、心筋梗塞や脳卒中など血管の病気のリスクも高まるとされています。
この先の長い返済期間のあいだに給付が生じる可能性を見込むため、慎重な判断がされやすくなります。逆にいえば、数値が安定していて合併症がなければ、判断が変わる余地もあるということです。
該当する人は珍しくない
厚生労働省の令和6年国民健康・栄養調査によれば、20歳以上で「糖尿病が強く疑われる者」の割合は12.9%、男女別では男性17.7%、女性9.3%とされています。
特別な事情というより、住宅を購入する年代では一定の割合で起こりうる状況です。金融機関や保険会社にとっても、日常的に扱っているケースになります。
参照:厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001603146.pdf
告知で書く内容
糖尿病の場合、告知は病名を書いて終わりにはなりません。求められる項目を確認します。
病名だけでなく数値まで求められる
一般的な団信の告知書では、過去3年以内に2週間以上にわたって医師の診察や治療、投薬を受けたことがあるかが問われます。糖尿病で通院や服薬を続けていれば、この項目に該当します。
そのうえで、糖尿病に該当する場合は詳しい内容を求められます。HbA1cの値、空腹時血糖値、服用している薬の名前、インスリン治療をしているかどうか、合併症があるかどうかといった項目です。
直近の検査結果が手元にないと正確に書けません。申し込みの前に、直近の血液検査の結果を用意しておきます。
合併症の有無が大きく影響する
判断に強く関わるのが合併症です。網膜症、腎症、神経障害といった合併症が確認されているか、進行しているかどうかで、見方は大きく変わります。
合併症がなく、通院と服薬で数値が安定している状態と、合併症が進んで治療が必要な状態とでは、まったく別の判断になります。定期的に眼底検査や尿検査を受け、経過が記録されていること自体が説明の材料になります。
健診で指摘されただけの場合
まだ治療を始めておらず、健康診断で「要再検査」や「要精密検査」と指摘されている段階のこともあります。この場合の扱いは、告知書の質問文によって変わります。
治療も投薬も受けていなければ「2週間以上の治療」には該当しません。ただし、最近3か月以内に医師の診察や検査を受け、治療や投薬をすすめられたかという項目には該当する可能性があります。健診の結果を渡され、受診をすすめられた場合が典型です。
該当するかどうかの判断に迷ったら、記入する前に金融機関の担当者に確認します。書かずに進めて後から問題になるより、確認して正確に書くほうが結果的に早く進みます。
数値の基準は公表されていない
インターネット上には、HbA1cが何%以下なら通る、といった目安が出回っています。実際には、保険会社が引受の基準を公表することはありません。
判断は、数値だけでなく、罹病期間、治療の内容、合併症の有無、他の病気の有無、年齢、借入額と期間などを総合して行われます。ある人が通った数値で自分も通るとは限らず、逆もまた同じです。
目安の数値を見て諦めたり、逆に安心したりするより、実際に申し込んで判断を受けるほうが確実です。
主治医の資料を添える
告知の内容によっては、診断書や医師の意見書といった追加の書類を求められることがあります。求められる前に、経過が安定していることを示す資料を用意しておく方法もあります。
通院の頻度、直近数回分の検査値の推移、合併症の検査結果、就業に支障がないことなどが分かる形にしておくと、判断の材料が増えます。書類の取得には日数がかかるため、早めに主治医へ相談します。
事実と違う告知をしてはいけない
糖尿病であることを書かなければ通るのではないか、と考えたくなる場面かもしれません。しかし、事実と違う告知は告知義務違反にあたります。
発覚すれば契約が解除される可能性があり、その場合、保険金は支払われません。残された家族がローンの残債をそのまま背負うことになり、住まいを手放す結果にもつながります。団信の目的そのものを損なう選択です。
| 告知の書き方や必要な資料を、事前に整理できます どの数値を書くのか、どの資料を添えると説明しやすいのかは状況によって変わります。申し込みの前に整理しておくと、審査にかかる時間を短くできます。 |
通らなかった場合の選択肢
一つの金融機関で断られても、そこで終わりではありません。検討できる方法を挙げます。
ワイド団信を検討する
ワイド団信は、通常の団信より引受の基準を緩めた商品です。糖尿病や高血圧などで通常の団信に入れなかった場合の、最初の選択肢になります。
その分、金利に上乗せがあります。上乗せ幅は金融機関によって異なり、年0.2%から0.3%程度とされる例が多く見られます。取り扱っている金融機関と上乗せ幅には差があるため、複数を比べる価値があります。
フラット35を検討する
住宅金融支援機構と民間金融機関が提供するフラット35では、団信(新機構団信)への加入が任意とされています。健康上の理由で団信に入れない場合でも、借入ができる可能性があります。
新機構団信に加入しない場合、金利は年0.2%引き下げられます。保険料に相当する負担がなくなる一方、万一のときにローンが消える保障もなくなります。
参照:住宅金融支援機構【フラット35】「ご加入の手続・ご注意点」
https://www.flat35.com/danshin_menu/shin-danshin/tetuduki.html
別の金融機関に申し込む
団信の引受をしている保険会社は金融機関ごとに異なり、判断の基準にも差があります。一つで断られても、別のところでは通ることがあります。
ただし、不動産の売買契約を先に結んでしまうと、ローンが組めなかった場合に手続きが複雑になります。健康状態に不安がある場合は、物件の契約に進む前に、複数の金融機関で見通しを確認しておくほうが安全です。
配偶者の名義で借りる
収入のある配偶者がいる場合、その方が債務者となって団信に加入するという方法もあります。名義人が変わることで、健康状態の問題は解消されます。
一方で、借入額は配偶者の収入を基準に決まるため、希望する金額に届かないことがあります。また、住宅の所有者や住宅ローン控除の適用も名義に応じて変わるため、税金の面も含めて確認が必要です。
治療を続けて時期を選ぶ
数値が安定していない時期に申し込んで断られた場合、治療を続けて経過が落ち着いてから再度申し込むという判断もあります。安定した状態が一定期間続いていることは、説明の材料になります。
購入の時期をずらせる事情であれば、無理にその時点で進めない選択肢もあるということです。主治医と相談しながら、治療と住宅購入の計画を並べて考えます。
| ワイド団信とフラット35、どちらが有利かを比べられます 上乗せ金利の負担と、団信なしで別に保障を用意する場合の保険料。どちらが合うかは、数字を並べて初めて判断できます。 |
コストの比較と団信なしの備え
選択肢が見えたら、金額で比べます。判断の材料になる数字を挙げます。
上乗せ金利は実際いくらの負担か
3,000万円を35年で借りる場合で計算します。金利1.5%であれば、毎月の返済は約9万1,900円、総返済額は約3,858万円です。
ワイド団信で0.3%上乗せされて1.8%になると、毎月は約9万6,300円、総返済額は約4,046万円となります。上乗せによる負担は35年で約188万円という計算です。
一方、団信に加入せず金利が0.2%下がって1.3%になれば、毎月は約8万8,900円、総返済額は約3,736万円です。浮いた分で生命保険に加入するという考え方もできます。
団信なしなら残債は家族に残る
団信に加入していなければ、契約者が亡くなってもローンは消えません。残された家族が返済を続けるか、住宅を売却して返済に充てるかを選ぶことになります。
住宅を売っても残債が残る場合があります。団信に入らないという選択をするなら、この点を家族と共有したうえで決めます。
収入保障保険や定期保険で代える
団信の代わりに、個人で生命保険に加入する方法があります。死亡保険金でローンを返済できるようにしておけば、団信に近い形の備えになります。
時間の経過とともに保障額が減る収入保障保険は、返済が進むにつれて必要額が減る住宅ローンと相性が良い形です。ただし、生命保険の加入にも告知があるため、団信で断られた場合は引受の基準を緩めた商品を含めて探すことになります。
必要な保障額の考え方
目安は、借入額から、すでに加入している生命保険の保険金額や、すぐに使える貯蓄を差し引いた金額です。配偶者の収入が見込めるなら、その分も考慮します。
返済が進めば必要額は下がるため、数年ごとに見直す前提で保険期間を区切るという組み方もできます。借入時点の金額をそのまま持ち続ける必要はありません。
返済中に糖尿病になった場合
すでにローンを返済している途中で診断されることもあります。どうなるのかを整理します。
糖尿病そのものは支払いの対象になりにくい
団信が支払われるのは、死亡または所定の高度障害状態になった場合です。通院や服薬をしながら働いている状態は、高度障害には該当しません。
つまり、団信に加入していても、治療をしながらの返済は自分で続けることになります。ここは団信の保障範囲として見落とされやすい部分です。
合併症が進んだ場合の扱い
合併症が進行した場合は、約款で定められた高度障害状態の定義に該当するかどうかで判断されます。網膜症が進んで両眼の視力を永久に失った場合など、定義に当てはまれば対象になり得ます。
注意したいのは、団信の種類によって支払いの基準が違う点です。フラット35の新機構団信は、身体障害者福祉法に定める1級または2級の障害に該当して手帳の交付を受けたときが要件とされており、一般の団信の高度障害とは基準が異なります。
加入している団信の約款を確認し、どの状態が対象になるのかを把握しておきます。
働けない期間は傷病手当金で補う
会社員として健康保険に加入していれば、業務外の病気で働けない期間について傷病手当金を受け取れます。連続する3日間を含めて4日以上仕事を休んだ場合が対象です。
1日あたりの金額は、支給を開始する日以前の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2に相当する額です。支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月とされています。
参照:全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
返済が苦しくなったら延滞する前に相談する
収入が減って返済が難しくなった場合、最も避けたいのは連絡をしないまま延滞することです。延滞が続くと、一括での返済を求められる段階に進む可能性があります。
返済が厳しくなりそうだと分かった時点で、借入先の金融機関に相談します。返済期間を延ばす、一定期間は元金の返済を据え置くといった条件の変更に応じてもらえる場合があります。
| 返済中の収入減に備える方法も、あわせて確認できます 団信ではカバーされない範囲を、就業不能保険などで補う設計が可能です。公的な制度でどこまで賄えるかを整理したうえでご提案します。 |
申し込みの前に準備しておくこと
動き出す前に整えておくと、手続きが進めやすくなる項目を挙げます。
直近の検査結果をそろえる
HbA1c、空腹時血糖値、服用している薬の名前と量を、直近の結果で確認しておきます。数回分の推移が分かる形にしておくと、安定しているかどうかを示せます。
あわせて、合併症に関する検査を受けているかを確認します。眼底検査や尿検査の結果があれば、合併症がない状態を説明する材料になります。
物件の契約前に見通しを立てる
健康状態に不安がある場合、通常より審査に時間がかかることがあります。売買契約の期限に間に合わず、慌てて条件の悪い商品を選ぶ流れは避けたいところです。
物件を探し始める段階で、ローンの見通しを先に確認しておくと、落ち着いて選べます。事前審査を複数の金融機関で受けておくのも一つの方法です。
疾病保障付き団信は加入前に検討する
最近は、3大疾病や生活習慣病を保障の対象に含む団信もあります。糖尿病が支払いの対象に含まれる商品もありますが、すでに糖尿病の治療を受けている場合、こうした団信への加入自体が難しくなります。
健康なうちに手厚い保障を付けておくか、後から個人で保険に入るかという判断になります。すでに治療中であれば、まず通常の団信やワイド団信で通ることを優先し、上乗せの保障は別に考えます。
家族と方針を共有しておく
団信に加入するのか、加入せずに別の保険で備えるのかは、万一のときに家族の生活を左右する判断です。本人だけで決めずに共有しておきます。
団信なしで借りるなら、亡くなったときにローンが残ることを家族が理解している状態にしておくことが前提です。加入している保険の内容と保険金額、その保険で残債をどこまで賄えるのかを、書き出して一緒に確認します。
まとめ
糖尿病は団信の告知でほぼ必ず記入が必要になりますが、病名だけで結果が決まるわけではありません。数値が安定しているか、合併症があるか、治療の内容はどうかを含めて総合的に判断されます。
告知では、HbA1cや空腹時血糖値、薬の名前、インスリン治療の有無、合併症の有無まで求められます。直近の検査結果を用意し、事実のとおりに記入します。事実と違う告知は、万一のときに保険金が支払われず、家族が残債を負う結果につながります。
通常の団信で断られた場合は、ワイド団信、団信の加入が任意のフラット35、別の金融機関への申し込み、治療を続けて時期を選ぶという道があります。団信に入らない場合は、生命保険で代わりの備えを用意します。
返済中に治療が始まっても、糖尿病そのものは団信の支払対象になりにくく、返済は続けることになります。返済が厳しくなりそうなときは、延滞する前に金融機関へ相談してください。
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