うつ病でも団信に入れる?告知の基準とワイド団信・フラット35という選択肢
住宅の購入を考え始めたとき、うつ病の治療歴があることが気がかりになる方は少なくありません。実際に、通院歴を理由に住宅ローンの手続きが進まなかったという話も聞かれます。
ただし、引っかかっているのは住宅ローン本体の審査ではなく、団体信用生命保険(団信)の審査であることがほとんどです。この2つは別の審査であり、団信に入れない場合でも、住宅を購入する道が完全に閉ざされるわけではありません。
この記事では、団信の告知で何を問われるのか、通らなかった場合にどんな選択肢があるのか、返済中に体調を崩したときにどう備えるのかを順に整理します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
| うつ病だと住宅ローンは組めない? | 組める可能性は残っている | 影響するのはローン本体の審査ではなく団信の審査です。状況によっては通ることもあります。 |
| 告知はどこまで必要? | 3年以内・2週間以上が一つの基準 | 過去3年以内に2週間以上にわたり治療や投薬を受けた場合は告知します。項目は商品ごとに異なります。 |
| 断られたらどうする? | ワイド団信やフラット35を検討 | 引受の基準を緩めたワイド団信のほか、団信への加入が任意のフラット35という選択肢があります。 |
| 返済中に発症したら? | 団信では原則カバーされない | うつ病は所定の高度障害に該当しにくいため、傷病手当金や就業不能保険で収入減に備えます。 |
この記事でわかること
- 住宅ローンの審査と団信の審査がどう違うのか
- 団信の告知で問われる項目と、告知が必要になる期間の考え方
- 通常の団信に入れなかった場合に検討できる4つの選択肢
- 団信に加入せずに借りる場合、どう保障を用意しておくか
- 返済中に体調を崩したときに使える公的な制度と、相談すべき順序
| 健康状態に不安がある場合の住宅ローンもご相談いただけます 団信の引受基準は保険会社ごとに異なり、同じ状況でも結果が変わることがあります。複数の商品を扱う立場から、通る可能性のある道筋を一緒に探します。 |
うつ病と住宅ローン審査の関係
まず、どこで何が判断されているのかを整理します。ここを取り違えると、対策の方向を誤ります。
ローンの審査と団信の審査は別
住宅ローンの審査で見られるのは、年収、勤続年数、他の借入の状況、購入する物件の担保としての価値などです。健康状態そのものは、ローン本体の審査項目ではありません。
健康状態が関わるのは団信の審査です。多くの金融機関が団信への加入を融資の条件にしているため、団信に入れないと結果としてローンが組めない、という流れになります。
つまり、収入や勤務先に問題がなくても団信で止まることがあり、逆に団信の加入が必須でない商品を選べば話が変わる、ということです。
団信とはどんな保険か
団信は、住宅ローンを借りている人が死亡したり、所定の高度障害状態になったときに、そのときのローン残高に相当する保険金が金融機関に支払われる仕組みです。残された家族はローンの返済を続けなくてよくなります。
金融機関にとっては、返済してもらえなくなるリスクを避けるための仕組みでもあります。借りる側と貸す側の双方にとっての安全装置という位置づけです。
精神疾患が慎重に見られる理由
保険会社は、加入を引き受けるかどうかを、将来の給付の見込みから判断します。治療が長期にわたる可能性や、再発の可能性が統計的に考慮されるため、精神疾患は慎重に扱われる傾向があります。
ただし、これは病名だけで一律に決まるものではありません。治療がいつ終わったか、通院や服薬が続いているか、休職や入院の経験があるかなど、状況によって判断は変わります。同じ病名でも結果が分かれるのはこのためです。
団信の告知で問われる内容
申し込みの際には告知書を記入します。何を聞かれるのかを事前に知っておくと、準備がしやすくなります。
主な告知項目
一般的な団信の告知書では、次のような内容が問われます。最近3か月以内に医師の診察や検査を受け、治療や投薬をすすめられたことがあるか。過去3年以内に所定の病気で手術を受けたか、または2週間以上にわたって医師の診察や治療、投薬を受けたことがあるか。手足の欠損や機能の障害、視力や聴力などの障害があるか、という3点です。
告知の項目や期間は商品によって異なります。同じ団信という名前でも、金融機関や引受をする保険会社が変われば内容が違うため、申込先ごとに確認が必要です。
3年以内・2週間以上という基準
うつ病で問題になりやすいのが、2つ目の項目です。過去3年以内に2週間以上にわたって診察や投薬を受けていれば、告知の対象になります。
逆にいえば、治療が終わってから3年以上が経過している場合や、治療期間が2週間に満たなかった場合は、この項目に該当しません。5年前に治療を終えているのであれば、この項目では告知の必要がないことになります。
ただし、他の項目に該当する可能性はあります。告知書の質問文を一つずつ読み、自分の状況が当てはまるかを確認します。判断に迷う場合は、記入する前に金融機関の担当者に確認します。
告知が必要な場合の伝え方
該当する場合は、事実をそのまま記入します。診断名、治療を受けた期間、現在の通院や服薬の状況、休職や入院の有無などを、書式に沿って記載します。
あいまいな書き方をすると確認に時間がかかり、かえって手続きが長引きます。診察券やお薬手帳、診断書などを手元に置き、期間や通院先を正確に書けるように準備しておくとスムーズです。
告知したあとの流れ
告知書を提出すると、保険会社が引受の可否を判断します。内容によっては、診断書や医師の意見書といった追加の書類を求められることがあります。
追加の書類が必要になると、医療機関に依頼して受け取るまでに時間がかかります。結果が出るまで数週間かかることもあるため、物件の引き渡し日から逆算して余裕を持って動きます。
結果は、加入できる、条件付きで加入できる、加入できない、のいずれかです。断られた場合でも理由は開示されないのが一般的なため、次の選択肢へ進むことになります。
事実と違う告知をしてはいけない理由
該当する事実を書かなかった場合、告知義務違反となります。発覚すれば契約が解除される可能性があり、その場合、保険金は支払われません。
困るのは残された家族です。本人に万一のことがあったときに保険金が出ず、ローンの残債をそのまま家族が背負うことになります。目先の審査を通すために事実と違う告知をすることは、家族を守るという団信の目的そのものを損ないます。
該当する事実があるなら、正しく告知したうえで、次に説明する選択肢を検討するほうが確実です。
| 告知の書き方で迷ったら、事前にご相談ください どこまで書くべきか、どの資料を用意すればよいかは、状況によって変わります。手続きを進める前に整理しておくと、審査の時間を短くできます。 |
通常の団信に入れなかった場合の選択肢
一つの金融機関で断られたとしても、そこで終わりではありません。検討できる方法を挙げます。
ワイド団信を検討する
ワイド団信は、通常の団信より引受の基準を緩めた商品です。健康状態に不安がある人でも加入できる可能性があり、通常の団信で断られた場合の最初の選択肢になります。
その分、金利に上乗せがあります。上乗せ幅は金融機関によって異なりますが、年0.2%から0.3%程度とされる例が多く見られます。借入額が大きく期間が長いほど、総返済額への影響も大きくなります。
3,000万円を35年で借りる場合、金利が0.3%上がると総返済額は百数十万円単位で増える計算です。上乗せ後の返済額で家計が回るかを、申し込む前に試算しておきます。
フラット35を検討する
住宅金融支援機構と民間金融機関が提供するフラット35では、団信(新機構団信)への加入が任意とされています。健康上の理由で団信に入れない場合でも、借入ができる可能性があります。
新機構団信に加入しない場合、金利は年0.2%引き下げられます。加入しないぶん保険料に相当する負担がなくなる一方、万一のときにローンが消える保障もなくなります。
参照:住宅金融支援機構【フラット35】「ご加入の手続・ご注意点」
https://www.flat35.com/danshin_menu/shin-danshin/tetuduki.html
別の金融機関に申し込む
団信の引受をしている保険会社は金融機関ごとに異なり、判断の基準にも差があります。一つで断られても、別のところでは通ることがあります。
ただし、不動産の売買契約を先に結んでしまうと、ローンが組めなかった場合に手続きが複雑になります。健康状態に不安がある場合は、物件の契約に進む前に、複数の金融機関で見通しを確認しておくほうが安全です。
配偶者の名義で借りる
収入のある配偶者がいる場合、その方が債務者となり団信に加入するという方法もあります。名義人が変わることで、健康状態の問題は解消されます。
一方で、借入額は配偶者の収入を基準に決まるため、希望する金額に届かないことがあります。また、住宅の所有者や住宅ローン控除の適用も名義に応じて変わるため、税金の面も含めて確認が必要です。
| ワイド団信とフラット35、どちらが有利かを比べられます 上乗せ金利の負担と、団信なしで別に保障を用意する場合の保険料。どちらが自分の状況に合うかは、試算して初めて見えてきます。 |
団信なしで借りる場合の備え方
フラット35などで団信に加入せずに借りる場合、その分の備えを別に用意しておく必要があります。
残債は家族に残る
団信に加入していなければ、契約者が亡くなってもローンは消えません。残された家族が返済を続けるか、住宅を売却して返済に充てるかを選ぶことになります。
住宅を売っても残債が残る場合があります。団信に入らないという選択をするなら、この点を家族と共有しておくことが前提になります。
収入保障保険や定期保険で代える
団信の代わりに、個人で生命保険に加入するという方法があります。死亡保険金でローンを返済できるようにしておけば、団信と近い形の備えになります。
時間の経過とともに保障額が減る収入保障保険は、返済が進むにつれて必要額が減っていく住宅ローンと相性が良い形です。保険料を抑えながら必要な期間の保障を用意できるという利点があります。
ただし、生命保険の加入にも告知があります。団信で断られた場合、一般の生命保険でも同じ結果になることがあるため、引受の基準を緩めた商品を含めて探すことになります。
団信ありと団信なしのコストを比べる
判断の材料として、金利の上乗せがいくらの負担になるのかを具体的に見ておきます。3,000万円を35年で借りる場合で比べます。
金利1.5%であれば、毎月の返済は約9万1,900円、総返済額は約3,858万円です。ワイド団信で0.3%上乗せされて1.8%になると、毎月は約9万6,300円、総返済額は約4,046万円となり、上乗せによる負担は35年で約188万円という計算になります。
一方、団信に加入せず金利が0.2%下がって1.3%になれば、毎月は約8万8,900円、総返済額は約3,736万円です。浮いた分で生命保険に加入するという考え方もできます。
どちらが有利かは、代わりに加入できる保険の保険料次第です。健康状態によっては保険料が割高になるため、両方を試算したうえで比べます。
必要な保障額の考え方
目安は、借入額から、団体信用生命保険以外で用意できる資金を差し引いた金額です。すでに加入している生命保険があれば、その保険金額も差し引きます。
返済が進めば必要額は下がっていくため、数年ごとに見直す前提で保険期間を区切るという組み方もできます。借入時点の金額をそのまま一生涯持ち続ける必要はありません。
返済中にうつ病になった場合
すでにローンを返済している最中に体調を崩すケースもあります。使える制度を知っておくと、対応の幅が広がります。
うつ病は団信の支払対象になりにくい
団信が支払われるのは、死亡または所定の高度障害状態になった場合です。うつ病による休職や療養は、この高度障害の状態に該当しないのが一般的です。
つまり、団信に加入していても、療養中の返済は自分で続けることになります。ここが団信の保障範囲として見落とされやすい部分です。
傷病手当金で当面の収入を補う
会社員として健康保険に加入していれば、業務外の病気やけがで働けない期間について傷病手当金を受け取れます。連続する3日間を含めて4日以上仕事を休んだ場合が対象です。
1日あたりの金額は、支給を開始する日以前の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2に相当する額です。支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月とされています。
参照:全国健康保険協会(協会けんぽ)「傷病手当金」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
障害年金という選択肢
療養が長期にわたる場合、障害年金の対象になることがあります。うつ病などの精神疾患も対象に含まれますが、初めて受診した日の要件や、保険料の納付の要件を満たす必要があります。
判断には専門的な確認が必要なため、年金事務所や社会保険労務士に相談するのが確実です。傷病手当金の支給が終わる時期が近づいたら、早めに検討を始めます。
返済が苦しくなったら延滞する前に相談する
収入が減って返済が難しくなった場合、最も避けたいのは連絡をしないまま延滞することです。延滞が続くと、一括での返済を求められる段階に進む可能性があります。
返済が厳しくなりそうだと分かった時点で、借入先の金融機関に相談します。返済期間を延ばす、一定期間は元金の返済を据え置くといった条件の変更に応じてもらえる場合があります。
体調のことは主治医に相談しながら、お金のことは早めに金融機関へ。この2つを分けて進めると、抱え込まずに済みます。
| 返済中の収入減に備える方法も、あわせて確認できます 団信ではカバーされない範囲を、就業不能保険などで補う設計が可能です。公的な制度でどこまで賄えるかを整理したうえでご提案します。 |
申し込みの前に準備しておくこと
動き出す前に整えておくと、手続きが進めやすくなる項目を挙げます。
治療の経過を整理する
いつ受診を始め、いつ治療が終わったのか、通院の頻度はどうだったのか、服薬は続いているのかを時系列で書き出します。診察券やお薬手帳が手元にあれば確認しやすくなります。
告知書に正確な期間を書けるかどうかで、審査にかかる時間が変わります。記憶があいまいな場合は、通院していた医療機関に確認しておきます。
物件の契約前に見通しを立てる
健康状態に不安がある場合、通常より審査に時間がかかることがあります。売買契約の期限に間に合わず、慌てて条件の悪い商品を選ぶという流れは避けたいところです。
物件を探し始める段階で、ローンの見通しを先に確認しておくと、落ち着いて選べます。事前審査を複数の金融機関で受けておくのも一つの方法です。
就業不能への備えも同時に考える
団信は死亡と高度障害に備えるもので、働けない期間の収入は対象外です。住宅ローンを組むタイミングは、この部分の備えを見直す機会でもあります。
就業不能保険や所得補償保険には、精神疾患を支払いの対象に含む商品と含まない商品があります。加入を検討する場合は、支払いの対象となる状態の定義を必ず確認します。健康状態によっては加入できないこともあるため、早めに調べておきます。
家族と方針を共有しておく
団信に加入するのか、加入せずに別の保険で備えるのかは、万一のときに家族の生活を左右する判断です。本人だけで決めずに、共有しておく必要があります。
団信なしで借りるなら、亡くなったときにローンが残ることを家族が理解している状態にしておくことが前提です。加入している保険の内容と保険金額、その保険で残債をどこまで賄えるのかを、書き出して一緒に確認しておきます。
まとめ
うつ病の治療歴があっても、住宅を購入する道が閉ざされるわけではありません。引っかかるのはローン本体ではなく団信の審査であり、治療がいつ終わったか、現在の状況はどうかによって判断は変わります。
告知は事実のとおりに行います。事実と違う告知は、万一のときに保険金が支払われず、残された家族が残債を負う結果につながります。該当する事実があるなら、正しく告知したうえで選択肢を探すほうが確実です。
通常の団信で断られた場合は、ワイド団信、団信の加入が任意のフラット35、別の金融機関への申し込み、配偶者名義での借入という道があります。団信に入らない場合は、生命保険で代わりの備えを用意します。
返済中に体調を崩した場合、うつ病は団信の対象になりにくいため、傷病手当金や障害年金といった公的な制度が支えになります。返済が厳しくなりそうなときは、延滞する前に金融機関へ相談してください。
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