経営者におすすめの保険7種類|選び方・損金算入のルールと注意点を解説
経営者が加入する保険は、家族のための保障だけを目的にするものではありません。会社の借入金や運転資金を守る事業保障、役員退職金の財源づくり、事業承継のときの納税資金など、法人としての課題と結びついた形で設計されます。そのため、個人の生命保険と同じ感覚で選ぶと、必要な保障が足りなかったり、逆に保険料が資金繰りを圧迫したりします。
さらに、2019年の法人税基本通達の改正によって、法人契約の保険料をどこまで損金にできるかのルールは大きく変わりました。「全額損金だから節税になる」という考え方だけで選ぶと、解約したときに想定外の課税が発生することもあります。
この記事では、経営者におすすめの保険の種類と目的別の選び方、保険料の経理処理、必要保障額の考え方、加入前に確認しておきたい注意点までを順に整理します。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
|---|---|---|
| 経営者に保険が必要な理由は? | 事業保障・退職金・承継の3つに備えるため | 借入金や運転資金を守る事業保障、役員退職金の財源、自社株の納税資金という法人特有の課題に対応します。 |
| おすすめの保険の種類は? | 目的別に7つの選択肢から選ぶ | 長期平準定期保険や逓増定期保険、収入保障保険など、目的によって向いている種類が異なります。共済も比較対象です。 |
| 保険料は全額損金にできる? | 最高解約返戻率の区分で決まる | 2019年の通達改正により、最高解約返戻率が50%を超える契約は一定割合を資産計上します。全額損金は限られます。 |
| 必要な保障額の決め方は? | 借入金+固定費-現預金で試算する | 事業保障資金は借入金と数か月分の固定費の合計から現預金を引いて算出し、退職金は功績倍率法で求めます。 |
この記事でわかること
- 経営者に法人契約の保険が必要とされる3つの理由
- 目的別に見た経営者向け保険7種類の特徴と向き不向き
- 2019年の通達改正以降の保険料の損金算入ルールと経理処理
- 事業保障資金と役員退職金の必要額を出すための計算式
- 加入前に確認したい注意点と、見直しを検討するタイミング
| 自社にどの保険が合うか、数字で確認しませんか 借入金の残高や勇退の時期によって、選ぶべき種類と保障額は変わります。決算書をもとに、必要保障額と保険料の目安を一緒に整理します。 >> 保険の無料相談はこちら(M.STOCKs 相談窓口) >> 保険料シミュレーションはこちら |
経営者に保険が必要とされる3つの理由
経営者が備える保険は、大きく分けて会社を守るためのものと、経営者個人と家族を守るためのものがあります。中小企業では社長個人と会社の資金が近い距離にあるため、この2つを切り離さずに考える必要があります。まずは、法人契約の保険が担っている役割を整理します。
会社の借入金と運転資金を守る事業保障
中小企業では、金融機関からの借入に経営者個人が連帯保証を行っているケースが今も残っています。経営者に万一のことがあれば、金融機関や取引先は返済や支払いの条件を見直そうとし、会社の資金繰りは一気に厳しくなります。
売上がすぐに落ちなくても、後継者が信用を築くまでには時間がかかります。その間の運転資金、仕入代金、従業員の給与を確保するための資金が事業保障資金です。法人契約の死亡保険金は会社が受け取り、当面の資金としてすぐに使えるため、事業保障の中心に位置づけられます。
保障額の目安は、短期借入金と長期借入金の合計に、数か月分の固定費を加えた金額です。具体的な計算式は後の見出しで扱います。
役員退職金の財源を計画的に準備する
役員退職金は、勇退時にまとまった現金が必要になる支出です。利益が出た年に手元資金から支払おうとしても、その年の資金繰り次第では支給額を抑えざるを得なくなります。
そこで、解約返戻金のある保険を使い、勇退の時期に合わせて返戻率が高くなる契約を組む方法が使われます。解約返戻金を益金に立て、同じ年度に退職金を損金として支給することで、税負担の山を平準化できるというのが基本的な考え方です。
退職金の支給は自社株の評価を下げる効果もあるため、事業承継とセットで検討されることが多い項目です。
事業承継と相続の納税資金に備える
業績が良い会社ほど自社株の評価は高くなり、後継者が相続や贈与で株式を引き継ぐときの税負担は重くなります。自社株は市場で売却できないため、納税資金を現金で用意しておく必要があります。
また、後継者以外の相続人がいる場合には、遺産分割を調整するための資金も必要です。経営者個人が契約する終身保険は、受取人を指定して確実に現金を渡せるため、分割対策として使われます。
生命保険金には相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)があり、同じ金額を現金のまま残すより有利になる場面があります。
経営者におすすめの保険7種類と特徴
経営者向けの保険は、商品名で選ぶものではなく、どの課題に使うかで選ぶものです。ここでは代表的な7つの選択肢について、向いている目的と注意点を整理します。
長期平準定期保険
保険期間を90歳や99歳など長期に設定した定期保険です。保険期間の途中で解約返戻金がゆるやかに増え、ピークが長く続くため、勇退の時期が数年単位でずれても対応しやすい特徴があります。
事業保障と退職金準備を1本で兼ねたい場合の基本形として使われます。一方で、保険料は掛け捨ての定期保険より高く、長期間の払込を前提とするため、契約時に払い続けられる保険料かどうかの確認が欠かせません。
逓増定期保険
契約からの経過年数に応じて保険金額が増えていく定期保険です。解約返戻率のピークが5年から10年程度と比較的早く訪れるため、退職の時期が近い経営者や、短期間で財源をつくりたい場合に向いています。
ピークを過ぎると返戻率は下がっていくため、解約や退職金支給の時期を先に決めたうえで、契約するかどうかを判断します。
収入保障保険
死亡保険金を一時金ではなく、毎月の年金形式で受け取る保険です。時間の経過とともに受取総額が減っていく仕組みのため、同じ保障額でも定期保険より保険料を抑えやすい点が特徴です。
借入金の返済が進むにつれて必要な保障額が減っていく会社や、経営者個人が遺族の生活費を確保したい場合に適しています。貯蓄性はほとんどないため、退職金の準備には向きません。
終身保険
一生涯の死亡保障が続き、解約返戻金が時間とともに積み上がる保険です。相続税の納税資金や遺産分割の資金を確実に残す用途で選ばれます。
法人契約でも個人契約でも使われますが、保険料は他の種類より高くなります。低解約返戻金型を選べば保険料を抑えられる一方、払込期間中に解約すると返戻率が大きく下がる点に注意が必要です。
医療保険・がん保険
経営者が入院や治療で現場を離れると、売上と意思決定の両方が止まります。法人契約の医療保険は給付金を会社が受け取り、休業中の固定費に充てられるため、事業を続けるという視点で選ぶ余地があります。
短期払いで払込を終え、その後に契約者を個人へ変更して個人の保障として残す方法も使われますが、名義変更時の評価額の取り扱いには税務上のルールがあるため、事前の確認が必要です。
就業不能保険・所得補償保険
死亡ではなく、働けない状態が続くリスクに備える保険です。経営者が長期の療養に入った場合、死亡時より資金繰りが厳しくなることがあるのは、役員報酬の支払いと治療費の負担が同時に発生するためです。
所得補償保険は損害保険会社が、就業不能保険は生命保険会社が扱います。支払対象となる状態の定義や免責期間が商品ごとに異なるため、保険料だけでなく条件の比較が重要になります。
経営セーフティ共済・小規模企業共済
保険そのものではありませんが、経営者の資金対策として比較対象になります。経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先の倒産による連鎖倒産に備える制度で、掛金は損金に算入できます。
小規模企業共済は経営者個人の退職金を準備する制度で、掛金は個人の所得控除の対象です。保険と共済は目的が異なるため、どちらかを選ぶのではなく組み合わせて設計するのが実務的な進め方です。
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目的別に見る経営者保険の選び方
種類が分かったら、自社の状況に当てはめます。判断の軸になるのは、借入金の水準、勇退までの期間、会社と個人のどちらに資金を残したいかという3点です。
借入金が多く事業保障を優先する場合
借入金の残高が年商に対して大きい会社では、まず保障額を確保することが優先されます。貯蓄性の高い保険で同じ保障額を用意しようとすると保険料が跳ね上がるため、掛け捨ての定期保険や収入保障保険で必要額を満たしたうえで、余力の範囲で貯蓄性のある契約を足す組み立てが現実的です。
返済が進めば必要保障額は下がるので、数年ごとに見直す前提で保険期間を区切る方法もあります。
役員退職金の準備を優先する場合
勇退までの期間が明確な場合は、その時期に解約返戻率のピークが来る商品を選びます。10年以内であれば逓増定期保険、15年以上先であれば長期平準定期保険が候補になります。
あわせて重要なのが、退職金規程を先に整備し、支給額の根拠を書面で残しておくことです。規程がないまま高額な退職金を支給すると、税務上の否認リスクが高まります。
経営者個人と家族の保障を優先する場合
会社に十分な内部留保があり、借入金も少ない場合は、法人契約より個人契約を厚くする判断もあります。遺族の生活費、住宅ローン、教育費を基準に必要額を出し、終身保険と収入保障保険を組み合わせます。
法人契約の保険金は会社に入るため、そのままでは家族の手元に渡らないという点は見落とされやすいところです。死亡退職金や弔慰金の規程を整えておくことで、会社に入った資金を遺族へ渡す道筋ができます。
会社の規模と利益水準から考える
利益が安定していない会社が、返戻率だけを見て高額な保険料の契約を結ぶと、数年後に払えなくなって解約し、元本を割ることがあります。
年間保険料は、税引前利益や償却前利益の一定割合以内に収めるといった上限を先に決めてから商品を選ぶと、無理のない設計になります。上限を決めずに提案を受けると、返戻率の高さだけで判断しやすくなります。
保険料の損金算入ルールと経理処理
法人契約の保険料をどこまで経費にできるかは、2019年(令和元年)の法人税基本通達の改正で整理されました。改正前の商品ごとの取り扱いとは考え方が変わっているため、現行のルールを確認します。
最高解約返戻率による4つの区分
定期保険と第三分野保険の保険料は、契約時に見込まれる最高解約返戻率に応じて、資産に計上する割合が決まります。50%以下であれば、原則として支払った保険料は期間の経過に応じて損金に算入されます。
50%超70%以下の区分では、保険期間の当初4割の期間に支払保険料の40%を資産計上します。70%超85%以下では同じ期間に60%を資産計上し、85%超の区分では当初10年間について最高解約返戻率の90%を資産計上するなど、資産計上の割合はさらに大きくなります。
資産に計上した金額は、一定の期間を過ぎてから取り崩し、損金に振り替えます。区分ごとの詳細な計算方法は、国税庁が公開している通達で確認できます。
年間保険料30万円以下の取り扱い
最高解約返戻率が50%超70%以下の区分であっても、一の被保険者についての年換算保険料相当額が30万円以下であれば、支払った保険料を期間の経過に応じて損金に算入できます。
この判定は被保険者単位で行われ、同じ人を被保険者とする契約が複数ある場合は合計額で判定します。医療保険などを小口で組み合わせるときに関係してくるルールです。
節税ではなく課税の繰り延べという理解
保険料を損金にできても、解約返戻金を受け取った年度にはその金額が益金になります。支払った時点で減らした税負担は、解約した時点で戻ってくるため、通算すれば税額が消えるわけではありません。
効果が生まれるのは、返戻金を受け取る年度に退職金の支給や大規模な修繕費など、対応する損金がある場合です。出口の使い道を決めないまま加入すると、解約した年度に多額の課税所得が発生します。
経営セーフティ共済は2024年の改正に注意
経営セーフティ共済は掛金を損金にできる制度ですが、令和6年10月1日以後に解約した契約について、解約日から2年を経過する日までに再加入して支払う掛金は、損金に算入できません。解約と再加入を短期間で繰り返す使い方が制限されました。
これまで掛金の納付月数が40か月を超えた時点で解約し、すぐに再加入する運用をしていた会社は、解約の時期と資金の使い道を、5年程度の長い期間で組み直す必要があります。
| 損金の扱いと出口の設計は、あわせて確認が必要です 資産計上の割合、解約返戻金を受け取る年度の対応、共済との組み合わせまで含めて、保険料の目安をシミュレーションで確認できます。 >> 保険の無料相談はこちら(M.STOCKs 相談窓口) >> 保険料シミュレーションはこちら |
必要保障額とシミュレーションの考え方
商品を選ぶ前に、いくら必要かを数字で出しておくと、提案を受けたときの比較がしやすくなります。ここでは3つの計算方法を示します。
事業保障資金の計算式
事業保障資金の目安は次のように考えます。短期借入金と長期借入金の合計に、当面の運転資金として固定費の6か月分から12か月分を加え、そこから会社がすぐに使える現預金を差し引きます。
たとえば借入金が1億円、月間の固定費が1,500万円、すぐに使える現預金が3,000万円の会社であれば、1億円+(1,500万円×6か月)-3,000万円で、1億6,000万円が目安になります。この金額を既契約の保険金額と比べ、不足分を新規契約で埋めるという手順です。
役員退職金の適正額
役員退職金の金額は、功績倍率法で算出するのが実務上の一般的な方法です。計算式は、最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率となります。
社長の功績倍率は3.0程度が一つの目安とされますが、法人税法上、不相当に高額な部分は損金に算入されません。同業・同規模の他社の水準や、退職金規程の内容が判断材料になるため、税理士と金額の根拠を確認したうえで規程に落とし込みます。
最終報酬月額100万円、在任20年、功績倍率3.0であれば、計算上は6,000万円です。この財源をどの保険で用意するかを逆算していきます。
経営者個人と家族の必要保障額
経営者個人の保障は、遺族の生活費、住宅ローンの残高、子どもの教育費の合計から、遺族年金や貯蓄などの収入見込みを差し引いて求めます。
法人からの死亡退職金や弔慰金が見込める場合は、その金額も収入側に入れます。会社と個人の保障を別々に計算し、最後に合算して重複を削ると、保険料の無駄が減ります。
加入前に確認したい注意点と失敗しやすい例
設計を誤ると、保険料を払い続けたのに想定した資金が残らないという結果になります。相談の現場で多い4つの例を挙げます。
出口を決めずに加入する
最も多いのは、解約する時期を決めないまま契約してしまうケースです。返戻率のピークを過ぎた契約を放置すると、払込総額に対して受け取れる金額は減っていきます。
契約の時点で、何年後に、いくらの解約返戻金を、何の支払いに充てるのかを書き出しておきます。この一文があるだけで、保険が資金計画の一部として機能するようになります。
キャッシュフローを圧迫する保険料設定
利益が出た年の感覚で保険料を決めると、業績が落ちた年に払込が重荷になります。減額や払済への変更という手段はありますが、いずれも返戻率は当初の想定より下がります。
年間保険料は、業績が落ちた年でも払い続けられる金額に抑えるのが原則です。保障を増やしたい場合は既存契約を増額するのではなく、別契約を追加すると後の調整がしやすくなります。
契約者・被保険者・受取人の設定ミス
法人契約で受取人を会社にしているか個人にしているかによって、経理処理も課税関係も変わります。役員のみを被保険者として受取人を遺族にしている場合、支払った保険料が役員に対する給与として扱われることがあります。
契約者、被保険者、受取人、保険金額、返戻率のピーク時期を1枚の表にまとめておくと、見直しのたびに全体を確認できます。
名義変更を前提とした設計
法人契約を後から個人へ名義変更し、低い評価額で個人に移すという手法は、2021年の通達改正で取り扱いが見直されました。解約返戻金が低い時期の契約についても、資産計上額を基準に評価するルールが設けられています。
名義変更を組み込んだ提案を受けた場合は、現行の税務上の取り扱いを税理士に確認することをおすすめします。過去の情報のまま説明されている可能性があるためです。
| 既契約の内容を、いちど棚卸ししてみませんか 契約者や受取人の設定、返戻率のピーク時期を確認するだけで、過不足が見えてくることがあります。加入中の証券をお持ちのうえでご相談ください。 >> 保険の無料相談はこちら(M.STOCKs 相談窓口) >> 保険料シミュレーションはこちら |
加入と見直しの進め方
実際に検討を始めるときの流れと、見直しを行うタイミングを整理します。
加入までの流れ
最初に行うのは現状の把握です。既存契約の一覧と直近3期分の決算書を用意し、借入金の残高、固定費、現預金を確認します。
次に必要保障額を算出し、目的に合う種類を絞り込みます。複数社の見積もりを比較したうえで、告知と審査に進みます。健康状態によって引受の条件は変わるため、加入の検討を先送りにしないほうが選択肢は広く残ります。
見直しを検討すべきタイミング
借入金の増減、役員報酬の改定、後継者の決定、決算内容の大きな変化があった年は、見直しの機会です。必要保障額は毎年変わるため、決算のたびに保険も含めて確認する習慣をつけると、過不足に早く気づけます。
返戻率のピークが近づいた契約については、解約するか継続するかを事前に判断します。ピークの時期は保険証券や設計書で確認できます。
まとめ
経営者向けの保険は、事業保障、退職金の財源、事業承継という3つの目的から逆算して選びます。商品ごとの返戻率や損金の割合は判断材料の一つでしかなく、必要保障額と出口の使い道を先に決めることが、選び方の中心になります。
損金算入のルールは最高解約返戻率の区分によって決まり、共済制度についても2024年に取り扱いが変わりました。制度は改正されるため、加入したときのルールが今も同じとは限りません。
自社の決算内容と勇退の時期を踏まえた設計は、一般的な情報だけでは決めきれない部分があります。数字を持ち寄って相談することで、保険料の水準と保障額のバランスが具体的になります。
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