保険・お金のコラム

傷病手当金だけでは足りない?休職中の生活費不足の原因と家計を守る7つの対策

「傷病手当金をもらっても生活費が足りない」「休職中の社会保険料や住民税の支払いが苦しい」――病気やケガで仕事を休まざるを得なくなったとき、多くの方がこうした経済的な不安を抱えています。

傷病手当金は月給の約3分の2が支給される心強い制度ですが、それだけで生活費のすべてをまかなえるケースは少ないのが実情です。月給30万円の方の場合、傷病手当金の支給額は約20万円となり、毎月約10万円の収入減が発生します。さらに、社会保険料や住民税の支払いは休職中も続くため、実際の手取りはさらに少なくなります。

この記事では、傷病手当金が足りなくなる原因を整理したうえで、利用できる公的支援制度や家計を守るための具体的な対策を解説します。休職中の生活費不安を少しでも和らげるために、ぜひ最後までお読みください。

確認したいポイント 結論 詳細
傷病手当金の支給額はいくら? 月給の約3分の2(標準報酬日額の2/3) 月給30万円なら約20万円、25万円なら約17万円が目安。ボーナスは計算に含まれません
なぜ傷病手当金だけでは足りない? 収入減と固定費の継続負担が重なるため 社会保険料・住民税・医療費の支払いが続き、手取りは支給額よりさらに減少します
休職中も払う税金・保険料は? 健康保険料・厚生年金・住民税は継続 前年の所得に基づく住民税は収入が減っても減額されず、大きな負担となります
利用できる公的支援制度は? 高額療養費・住居確保給付金・貸付制度など 傷病手当金以外にも医療費や家賃の負担を軽くする複数の制度があります
生活費の不足にどう対処する? 固定費削減・制度活用・一時資金の3段構え 通信費やサブスクの見直し、公的貸付の利用、保険の整理が効果的です
就業不能保険は必要? 傷病手当金で不足する分を補う有力な選択肢 月々数千円の保険料で、働けない期間の収入減をカバーできる可能性があります
傷病手当金の支給期間は? 支給開始から通算して最長1年6カ月 2022年の法改正で通算制に変更。途中就労しても期間が延長されるようになりました
退職後も傷病手当金はもらえる? 条件を満たせば継続受給が可能 被保険者期間1年以上+退職日に受給中または受給できる状態であることが条件です

この記事でわかること

  • 傷病手当金の支給額の計算方法と、生活費に対していくら不足するかの具体的な目安
  • 休職中も支払い続ける社会保険料・住民税・医療費の実態と家計への影響
  • 高額療養費制度や生活福祉資金貸付制度など、傷病手当金以外に使える公的支援
  • 固定費の削減方法や家計改善策など、今すぐ実行できる7つの対策
  • 傷病手当金の不足分を補う就業不能保険の仕組みと選び方のポイント

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傷病手当金の仕組みと支給額の計算方法

傷病手当金は、健康保険に加入している会社員や公務員が、業務外の病気やケガによって働けなくなった場合に支給される所得補償制度です。通勤中や勤務中の事故は労災保険の対象となるため、傷病手当金は対象外となります。

支給額は「標準報酬日額の3分の2」です。標準報酬日額は、支給開始日以前の連続した12カ月間の各月の標準報酬月額の平均額を30で割った金額です。たとえば、月給30万円の方の場合、1日あたりの支給額は約6,667円、月額換算で約20万円となります。月給25万円なら月額約17万円です。

注意すべき点として、傷病手当金の計算にボーナス(賞与)は含まれません。そのため、年収ベースで考えると実質的な補填率は3分の2よりも低くなります。また、会社から給与が一部支払われている場合は、その分だけ傷病手当金が減額されます(参照:全国健康保険協会「傷病手当金」)。

傷病手当金の支給期間と通算化の仕組み

傷病手当金の支給期間は、支給を開始した日から通算して最長1年6カ月です。2022年1月の健康保険法改正により、支給期間は「暦日ベース」から「通算」に変更されました。

この改正により、途中で復職して傷病手当金を受け取らない期間があっても、その日数は1年6カ月の計算に含まれなくなりました。たとえば、3カ月間休職して復帰し、再び同じ病気で休職した場合、1年6カ月から3カ月分を差し引いた残りの期間について受給を続けることが可能です。

ただし、1年6カ月を超えると原則として傷病手当金は終了します。その後も働けない状態が続く場合は、障害年金の申請や後述する就業不能保険の活用を検討する必要があります。

傷病手当金だけでは足りない3つの原因

「傷病手当金をもらっているのに生活が苦しい」と感じる方が多いのは、収入の減少と支出の継続が同時に起こるためです。ここでは、生活費が足りなくなる主な原因を3つに分けて解説します。

原因1:支給額が月給の約3分の2にとどまる
傷病手当金は月給の満額ではなく、約3分の2しか支給されません。月給30万円の方であれば、毎月約10万円の収入減となります。住宅ローンや家賃、食費、光熱費といった生活費は休職してもそのまま発生するため、この10万円の差額がそのまま家計の赤字につながります。

とくに、住居費や教育費といった固定費の割合が高い世帯ほど、収入が3分の2に減るダメージは大きくなります。「働いていたときは何とかなっていた」という家計でも、傷病手当金だけではまかなえないケースが多いのです。月給別の目安として、月給25万円なら約8.3万円、月給35万円なら約11.7万円の収入減が発生することになります。

また、傷病手当金は非課税ですが、それでも手取り収入と比べると不足することに変わりはありません。ボーナスが支給されない期間が長引くと、年単位で見たときの収入減はさらに大きくなります。ボーナスで住宅ローンの一部を返済していた方などは、とくに注意が必要です。

原因2:社会保険料と住民税の支払いが続く
休職中であっても、健康保険料と厚生年金保険料の支払い義務は続きます。会社員の場合、これらの保険料は労使折半ですが、給与からの天引きができなくなるため、会社が立て替えて後日精算するか、自分で納付するかのどちらかになります。

住民税は前年の所得に基づいて計算されるため、今年の収入が減っても税額は変わりません。そのため、休職1年目は「収入は減ったのに住民税は働いていたときと同じ金額を請求される」という厳しい状況に陥りがちです。

たとえば、月給30万円で傷病手当金が約20万円の場合、社会保険料と住民税を差し引くと、手元に残る金額は約13万~15万円程度まで下がることもあります。

原因3:医療費や通院交通費の負担が増える
休職の原因となった病気やケガの治療には、継続的な通院や投薬が必要です。健康保険の3割負担が適用されるとはいえ、毎月の医療費は数千円~数万円かかることがあります。

精神疾患(うつ病や適応障害など)の場合は、定期的なカウンセリングや長期の投薬が必要になるため、月々の医療費負担が想像以上に大きくなるケースがあります。自立支援医療制度を利用すれば自己負担が原則1割に軽減されますが、申請しなければ適用されないため、早めに確認しておくことが重要です。

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傷病手当金以外に利用できる公的支援制度

傷病手当金だけでは生活費が足りない場合、他の公的支援制度を併用することで家計の負担を軽減できます。申請しないと利用できない制度がほとんどですので、該当するものがないか早めに確認しましょう。

高額療養費制度

1カ月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。70歳未満で年収約370万~770万円の方の場合、自己負担の上限は月額約8万円程度です。入院や手術で医療費が高額になった月は、必ず申請しましょう。事前に「限度額適用認定証」を取得しておけば、窓口での支払いを上限額までに抑えることもできます。

自立支援医療制度(精神通院医療)

うつ病や適応障害など精神疾患の通院治療をしている方は、自立支援医療制度を利用できます。通常3割の医療費自己負担が原則1割に軽減されるため、長期通院の方ほど負担軽減効果は大きくなります。申請先はお住まいの市区町村の窓口です。

住居確保給付金

離職・廃業から2年以内、または休業等で収入が減少した方を対象に、家賃相当額を原則3カ月間(最長9カ月間)支給する制度です。貸付ではなく給付のため、返済は不要です。収入要件や資産要件がありますので、お住まいの自治体の福祉窓口で確認してください。

生活福祉資金貸付制度

社会福祉協議会が窓口となる低金利(または無利子)の貸付制度です。「緊急小口資金」は最大10万円まで無利子で借りられ、「総合支援資金」は単身で月15万円以内、2人以上世帯で月20万円以内を最長3カ月間借りられます。まず緊急小口資金で急場をしのぎ、並行して総合支援資金を申請するのが実務上のセオリーとされています。申請にあたっては、休職に至った経緯や現在の収入状況を説明する書類が必要となりますので、事前に準備しておくとスムーズです。

傷病手当金が足りないときの7つの対策

公的支援制度の活用と合わせて、家計を守るための具体的な行動を取ることが重要です。以下の7つの対策を、優先度の高い順に実行していきましょう。

対策1:家計の収支を「見える化」する
まずは現在の収入(傷病手当金の支給額)と支出(固定費・変動費)を書き出し、月々の赤字額を正確に把握しましょう。赤字の全体像がわからないと、効果的な対策を打つことができません。家計簿アプリやノートで構いませんので、まずは1カ月分の数字を整理することから始めてください。

対策2:固定費を優先的に見直す
通信費(スマホ料金を格安プランに変更)、サブスクリプションサービスの解約、保険の重複契約の整理など、毎月自動で発生する固定費から削減するのが効果的です。固定費は一度削減すれば毎月の効果が持続するため、変動費の節約より先に取り組むべきです。

対策3:公的支援制度を申請する
前述の高額療養費制度、住居確保給付金、生活福祉資金貸付制度など、自分が利用できる制度を調べて申請しましょう。「制度を知らなかった」という理由で利用しないのは非常にもったいないことです。市区町村の福祉窓口やハローワークに相談すると、利用可能な制度を案内してもらえます。

対策4:会社の休職制度や福利厚生を確認する
企業によっては、傷病手当金とは別に給与の一部を補填する独自の休職手当制度を設けている場合があります。就業規則や人事部門に確認してみましょう。また、共済組合に加入している場合は、追加の給付金が受けられることもあります。

対策5:医療費の負担を軽減する
高額療養費制度の活用に加え、精神疾患の場合は自立支援医療制度を申請することで、医療費の自己負担を大幅に減らせます。また、ジェネリック医薬品への切り替えを主治医に相談することも有効です。

対策6:住民税の減免・猶予を相談する
休職により収入が大幅に減少した場合、住民税の減免や徴収猶予が認められることがあります。対応は自治体によって異なりますが、まずはお住まいの市区町村の税務窓口に相談してみましょう。何もせずに滞納するよりも、早めに相談することが大切です。

対策7:就業不能保険で不足分に備える
すでに休職中の方は新規加入が難しい場合もありますが、今後の備えとして就業不能保険の加入を検討しましょう。傷病手当金で不足する月々5万~10万円の収入減を補う設計にすることで、次に同じような事態が起きたときの安心感が大きく変わります。詳しくは次の章で解説します。

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就業不能保険で傷病手当金の不足分をカバーする方法

傷病手当金だけでは足りない部分を補う手段として、民間の就業不能保険が注目されています。就業不能保険とは、病気やケガにより長期間働けなくなったときに、毎月一定額の給付金を受け取れる保険です。

就業不能保険の仕組みと傷病手当金との違い

傷病手当金が公的な所得補償であるのに対し、就業不能保険は民間の保険商品です。両方を受給することは可能で、傷病手当金と就業不能保険の給付金を合わせることで、休職前の手取り収入に近い金額を確保できる場合があります。

就業不能保険は、月額10万円や15万円など、給付金額を自分で設定できる商品が多く、傷病手当金で不足する金額を補うように設計するのが合理的です。保険料は年齢や職業、給付金額によって異なりますが、30代の方で月額10万円の保障であれば、月々2,000円~3,000円程度から加入できる商品もあります。

就業不能保険を選ぶときの3つのポイント

1つ目は「精神疾患が保障対象に含まれるかどうか」です。就業不能保険の中には、うつ病や適応障害などの精神疾患を保障対象外としている商品があります。精神疾患による休職は年々増加しており、対象に含まれる商品を選ぶことが重要です。

2つ目は「免責期間(支払対象外期間)の長さ」です。多くの就業不能保険には60日や180日などの免責期間が設定されています。会社員の場合は傷病手当金が先に支給されるため、免責期間が長い商品でも大きな問題にはなりませんが、自営業者やフリーランスの方は免責期間が短い商品を選ぶ必要があります。

3つ目は「保険期間と保険料のバランス」です。60歳満了や65歳満了など、保険期間が長いほど保険料は高くなります。定年退職までの期間を目安に、無理のない保険料で加入できる商品を選びましょう。

生命保険文化センターの調査では、世帯主が働けなくなった場合に生活費に不安を感じる人の割合は74.6%に達しています。「まだ健康だから大丈夫」と思っているうちに備えておくことが、いざというときの大きな安心につながります。

就業不能保険は、傷病手当金の支給期間(最長1年6カ月)が終了した後の長期療養に備えるうえでもとくに有効です。傷病手当金が終了した後も働けない状態が続くと、収入源は障害年金のみとなり、受給できたとしても金額は限られます。就業不能保険があれば、この空白期間の生活費をカバーすることが可能です。

自営業者やフリーランスの方は、国民健康保険には傷病手当金の制度がないため、働けなくなった日から収入が途絶えるリスクがあります。会社員以上に就業不能保険の重要性が高いといえるでしょう。

傷病手当金の申請で知っておきたい注意点

傷病手当金を確実に、かつ早く受け取るためには、申請手続きのポイントを押さえておく必要があります。

申請から振込までのタイムラグに注意

傷病手当金の申請から実際の振込までには、通常2週間~2カ月程度かかります。とくに初回の申請は審査に時間がかかることが多いため、休職が決まったらできるだけ早く申請手続きを進めることが重要です。

申請書は被保険者(本人)が記入する部分、事業主が記入する部分、医師が記入する部分に分かれています。医師の意見書は通院の際に依頼する必要があるため、忘れずに準備しましょう。書類の不備があると差し戻しとなり、振込がさらに遅れる原因になります。

なお、2026年1月からは協会けんぽで傷病手当金の電子申請が開始されています。マイナンバーカードがあればスマホやパソコンから申請でき、郵送の手間とタイムラグを省略できます。

退職後も傷病手当金を受け取るための条件

休職中にそのまま退職することになった場合でも、以下の2つの条件を満たしていれば、退職後も傷病手当金を継続して受け取ることができます。

条件1:退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。
条件2:退職日に傷病手当金を受給しているか、または受給できる状態であること。

重要なのは、退職日に出勤してしまうと「労務不能」の状態ではないと判断され、退職後の継続給付が受けられなくなる点です。退職日は必ず休んでおくようにしましょう。退職後の継続給付を受ける場合は、健康保険組合に必要書類を提出して改めて手続きを行う必要があります。

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まとめ

傷病手当金は病気やケガで働けないときの心強い制度ですが、支給額は月給の約3分の2にとどまり、社会保険料や住民税の支払いが続くため、多くの方が生活費の不足を経験します。

生活費の不足に対処するためには、まず家計の収支を正確に把握し、固定費の削減と公的支援制度の活用を優先的に進めることが重要です。高額療養費制度や自立支援医療制度、住居確保給付金、生活福祉資金貸付制度など、申請すれば利用できる制度は複数あります。

また、今後に備えて就業不能保険への加入を検討することで、次に同じような事態が起きたときの経済的なリスクを大幅に軽減できます。傷病手当金で不足する月5万~10万円をカバーする設計にすると、家計全体の安心感が大きく変わるでしょう。

休職中は治療に専念することが最も大切です。お金の不安を少しでも減らして治療に集中できるよう、使える制度は早めに活用し、将来のリスクに対する備えも検討してみてください。とくに、傷病手当金の申請は早ければ早いほど振込開始も早くなるため、休職が決まったらすぐに手続きを進めることをおすすめします。

「どの制度が使えるのかわからない」「就業不能保険の選び方を相談したい」という方は、専門スタッフへの無料相談をぜひご活用ください。一人ひとりの状況に合わせた家計改善プランを一緒に考えることで、不安を解消する第一歩を踏み出せます。