保険・お金のコラム

生命保険の受取人は内縁の妻・夫にできる?条件・税金の注意点を解説

「結婚はしていないけれど、長年連れ添ったパートナーに生命保険金を遺したい」——そう考えて、内縁の妻・夫を受取人にできるのか気になっていませんか。

生命保険の受取人は、原則として戸籍上の配偶者や2親等以内の血族に限られます。そのため内縁・事実婚のパートナーは原則の範囲外ですが、保険会社が定める要件を満たせば受取人に指定できる場合があります。近年は事実婚や同性パートナーを認める保険会社も増えており、選択肢は広がりつつあります。

ただし、内縁のパートナーは法律上の配偶者とは異なり、相続税の非課税枠が使えない、税額が2割加算されるなど、税金面で不利になる点には注意が必要です。この記事では、内縁の妻・夫を生命保険の受取人にする条件や、税金の注意点、受取人にできない場合の対処法、保険以外で財産を遺す方法までをわかりやすく解説します。大切なパートナーに確実にお金を遺すために、ぜひ参考にしてください。

生命保険の受取人に内縁の妻・夫は指定できる?

まずは、生命保険の受取人に関する原則と、内縁・事実婚のパートナーがどう扱われるのかを確認しましょう。

原則は「配偶者と2親等以内の血族」

生命保険の死亡保険金の受取人に指定できるのは、原則として戸籍上の配偶者と、2親等以内の血族です。2親等以内の血族には、子・孫・父母・祖父母・兄弟姉妹が含まれます。

受取人の範囲がこのように限られているのには理由があります。保険金目的の犯罪やモラルリスク(保険の悪用)を防ぎ、被保険者と生活上・経済上の密接な関係にある人に保険金を渡すためです。もし誰でも自由に受取人にできてしまうと、保険金をめぐるトラブルや犯罪の温床になりかねません。

ここで注意したいのは、原則における「配偶者」は婚姻届を提出した法律上の妻・夫を指すという点です。どれだけ長く一緒に暮らしていても、婚姻届を出していない内縁・事実婚のパートナーは、原則としてこの範囲には含まれません。

結論|要件を満たせば内縁・事実婚のパートナーも指定できる

では、内縁のパートナーには保険金を遺せないのかというと、そうではありません。結論として、保険会社が定める要件を満たせば、内縁の妻・夫を生命保険の受取人に指定できる場合があります。

近年は、価値観やライフスタイルの多様化を背景に、あえて籍を入れない事実婚を選ぶカップルが増えています。こうした変化を受けて、事実婚のパートナーや同性パートナーを受取人として認める保険会社が増えているのです。

ただし、内縁のパートナーを受取人にできるかどうか、またそのための要件は、保険会社・商品によって異なります。「A社では認められたのに、B社では断られた」ということも起こり得ます。内縁のパートナーを受取人にしたい場合は、加入前に必ず保険会社へ確認することが大切です。

内縁の妻・夫を受取人にするための条件

内縁の妻・夫を生命保険の受取人にするために、保険会社が設定している主な条件は次のとおりです(会社により異なります)。おおむね「実態として夫婦同然の関係であること」を、複数の角度から確認する内容になっています。

お互いに戸籍上の配偶者がいない

大前提として、被保険者と内縁のパートナーの双方に、法律上の配偶者がいないことが求められます。

たとえば、法律上の配偶者と離婚が成立していないまま、別のパートナーと事実婚状態にある「重婚的内縁」の場合は、原則として受取人に指定できません。戸籍上の配偶者の権利と衝突し、保険金をめぐるトラブルに発展するおそれがあるためです。まずはお互いの戸籍の状況を確認しておきましょう。

一定期間以上、同居している

保険会社が定める一定の期間、内縁のパートナーと同居していることが条件になります。一緒に暮らしている実態が、夫婦同然の関係であることの重要な証拠になるためです。

必要な同居期間は保険会社によって異なり、明示されていないことも多くあります。同居を始めたばかりの場合や、単身赴任などで別居している期間がある場合は、契約内容や状況によって認められないこともあるため、個別に確認が必要です。

一定期間以上、生計を共にしている

同居に加えて、一定期間にわたり生計を共にしていることも求められます。生計を共にしているとは、家賃や生活費を同じ財布から支出しているなど、経済的に一体の生活を送っている状態を指します。

同居していても、ルームシェアのように家計が完全に別々の場合は、内縁関係として認められないことがあるため注意が必要です。

関係を証明する書類の提出・保険会社の確認

内縁関係であることを客観的に示すため、書類の提出や保険会社による確認・調査が求められることがあります。代表的なのは、同一世帯であることがわかる住民票(続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」と記載されたものなど)です。

こうした書類や確認を通じて「事実上の配偶者」と認められると、内縁のパートナーを受取人に指定できます。手続きに時間がかかる場合もあるため、余裕をもって準備を進めましょう。

【同性パートナーの場合】

同性パートナーについても、上記と同様に所定の要件(同居・生計同一・関係を示す書類や自治体のパートナーシップ証明など)を満たせば、受取人に指定できる保険会社が増えています。取り扱いは会社ごとに異なるため、事前の確認が必要です。

内縁の妻・夫が受取人になるときの税金の注意点

無事に内縁のパートナーを受取人にできた場合でも、安心はまだ早いかもしれません。税金面では、法律上の配偶者より不利になる点がいくつもあるためです。注意点を整理しましょう。

契約形態によって税金の種類が変わる

死亡保険金にかかる税金は、「契約者(保険料を負担する人)」「被保険者」「受取人」の組み合わせによって変わります。内縁のケースを当てはめると、おおむね次のようになります。

契約者(保険料負担者) 被保険者 受取人 かかる税金
内縁の夫(故人) 内縁の夫 内縁の妻 相続税
内縁の妻 内縁の夫(故人) 内縁の妻 所得税(一時所得)
内縁の夫(故人) 内縁の夫 第三者(子など) 贈与税となる場合あり

 

※上表は代表的な例です。実際の課税関係は契約内容により異なります。

最も多いのは、故人が自分を被保険者として保険料を負担し、内縁のパートナーを受取人にするケースで、この場合は相続税の対象になります。誰が保険料を負担するかによって税金の種類が変わるため、契約時に「契約者・被保険者・受取人」の組み合わせをよく考えておくことが大切です。

生命保険金の非課税枠が使えない

死亡保険金が相続税の対象になる場合、通常は「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使えます。たとえば法定相続人が2人なら、1,000万円までの保険金には相続税がかかりません。

しかし、この非課税枠を利用できるのは法定相続人に限られます。内縁のパートナーは、どれだけ長く連れ添っていても法定相続人ではないため、この非課税枠を一切使えません。同じ金額の保険金を受け取っても、法律上の配偶者と比べて相続税の負担が重くなりやすい点は、あらかじめ理解しておきましょう。

相続税が2割加算になる・配偶者控除なども使えない

さらに、相続税には「2割加算」というルールがあります。配偶者・子・父母以外の人が財産を受け取ると、算出された相続税額が2割増しになるのです。内縁のパートナーはこの2割加算の対象となります。

加えて、法律上の配偶者であれば使える「配偶者の税額軽減(1億6,000万円または法定相続分までは相続税がかからない制度)」や、自宅の土地の評価額を大幅に下げられる「小規模宅地等の特例」なども、内縁のパートナーは利用できません。

このように、内縁の場合は「非課税枠なし・2割加算・各種特例なし」という三重の負担があり得ます。保険金額を決める際は、手取りベースでいくら遺せるのかという視点で、税負担も踏まえて備えを考えることが大切です。

内縁の妻・夫を受取人にできない場合の対処法

保険会社の要件を満たせず、内縁のパートナーを受取人にできない場合は、次のような方法も検討できます。いずれも人生に関わる大きな選択のため、メリット・デメリットをよく理解したうえで判断しましょう。

養子縁組をする

内縁のパートナーと養子縁組をすると、法律上の親子関係が生じ、2親等以内の血族として受取人に指定できるようになります。養子は法定相続人にもなるため、保険金の非課税枠が使えるようになり、保険以外の財産を受け継ぐ権利も得られます。

ただし、夫婦ではなく「親子」という法律関係になる点は、よく理解しておく必要があります。感情面での受け止め方も含めて、双方が納得できるかを慎重に話し合いましょう。

入籍する

婚姻届を提出して法律上の夫婦になれば、当然ながら受取人に指定できるようになります。それだけでなく、相続税の配偶者控除や小規模宅地等の特例など、各種の税制優遇もフルに利用できるようになり、税負担の面では最も有利な選択肢です。

一方で、戸籍に婚姻の事実が残る、姓の変更が必要になるなど、事実婚を選んできた理由と相反する面もあります。入籍するかどうかは、税金や保険のためだけでなく、二人の生き方として双方でよく話し合って判断しましょう。

生命保険以外で内縁の妻・夫に財産を遺す方法

生命保険の受取人指定が難しい場合でも、内縁のパートナーに財産を遺す方法は複数あります。保険とあわせて検討することで、より確実な備えになります。

遺言書を作成する

遺言書を作成すれば、法定相続人ではない内縁のパートナーにも財産を遺贈できます。内縁のパートナーは遺言がなければ原則として財産を受け取れないため、遺言書の作成は内縁関係における相続対策の基本といえます。

形式に不備があると無効になるリスクを避けるには、公証人が作成に関与し、原本を公証役場で保管できる「公正証書遺言」がおすすめです。ただし、ほかの相続人には遺留分(最低限受け取れる権利)があるため、これを侵害しない内容にするよう注意が必要です。

生前贈与を行う

生きているうちに財産を渡す生前贈与も有効です。自分の目の届くうちに、確実にパートナーへ財産を渡せるのがメリットです。

ただし、年間110万円を超える贈与には贈与税がかかります。夫婦間で使える贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)などの特例は、内縁のパートナーには適用されないため、内縁の場合に使える控除や特例はほとんどない点に注意しましょう。計画的に、複数年に分けて贈与するなどの工夫が必要です。

家族信託などを活用する

家族信託を使えば、自分が亡くなった後の財産の管理方法や承継先を柔軟に設計できます。たとえば、「自分の死後も内縁のパートナーが自宅に住み続けられるようにし、パートナーの死後は自分の子に承継させる」といった、遺言では難しい二段階の設計も可能です。

ただし、仕組みが複雑で設計を誤るとトラブルのもとになるため、司法書士など専門家への相談が欠かせません。なお、内縁のパートナーは、生計維持関係などの要件を満たせば遺族年金を受給できる場合もあります。公的保障も含めて、遺されたパートナーの生活設計を全体で考えましょう。

生命保険 受取人 内縁に関するよくある質問(FAQ)

Q. 内縁の妻・夫は必ず生命保険の受取人にできますか?

必ずではありません。受取人の原則は戸籍上の配偶者と2親等以内の血族であり、内縁の場合は保険会社の要件(お互いに戸籍上の配偶者がいない・同居・生計同一など)を満たし、保険会社に認められた場合に指定できます。可否や要件は会社ごとに異なるため、複数の保険会社に確認するのも一つの方法です。

Q. 内縁のパートナーが受取人だと税金は高くなりますか?

相続税の対象になる場合、法定相続人ではないため「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が使えず、税額の2割加算の対象にもなります。配偶者の税額軽減などの特例も使えないため、法律上の配偶者より負担が重くなりやすいです。契約形態によっては所得税や贈与税の対象になることもあります。

Q. 同性のパートナーも受取人にできますか?

所定の要件(同居・生計同一・自治体のパートナーシップ証明など)を満たせば、同性パートナーを受取人に指定できる保険会社が増えています。取り扱いは会社ごとに異なるため、事前に確認しましょう。

Q. 内縁関係を証明するには、どんな書類が必要ですか?

代表的なのは、同一世帯で続柄が「妻(未届)」「夫(未届)」と記載された住民票です。このほか、保険会社所定の確認書類や調査が求められる場合もあります。必要書類は保険会社によって異なるため、申し込み前に確認し、早めに準備しておきましょう。

まとめ|内縁の受取人指定は「条件」と「税金」を確認して

生命保険の受取人は原則として戸籍上の配偶者と2親等以内の血族に限られますが、保険会社の要件(お互いに戸籍上の配偶者がいない・同居・生計同一・証明書類など)を満たせば、内縁の妻・夫も受取人に指定できる場合があります。事実婚や同性パートナーを認める保険会社は増えており、まずは各社の取り扱いを確認することが第一歩です。

ただし、内縁のパートナーは法定相続人ではないため、相続税の非課税枠が使えず、税額の2割加算や各種特例の対象外になるなど、税金面では不利になります。受取人にできない場合や保険だけでは不安な場合は、養子縁組や入籍のほか、遺言書・生前贈与・家族信託といった方法もあわせて検討しましょう。

大切な人に確実に財産を遺すためには、保険の条件と税金の両面からの準備が欠かせません。判断に迷うときは、保険会社や、税理士・司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。