統合失調症でも保険に入れる?加入できる保険の種類と公的制度・治療費を解説
「統合失調症があると保険に入れないのでは?」と不安を抱えている方やそのご家族は少なくありません。確かに、統合失調症の診断を受けている方は通常の医療保険や生命保険への加入が難しくなるケースがほとんどです。
しかし、統合失調症でも加入できる保険は存在します。引受基準緩和型医療保険や無選択型保険、障害のある方を対象としたぜんち共済など、選択肢は複数あります。症状が安定していても再発リスクがあるために通常の保険加入が難しいという事情がありますが、あきらめる必要はありません。
厚生労働省の「令和5年患者調査」によると、統合失調症の入院患者は約12.6万人、外来患者は約76.5万人と報告されています。精神疾患の入院患者の中では統合失調症が最も大きな割合を占めており、長期にわたる治療と経済的な支援が必要な疾患です。
この記事では、統合失調症の方が加入できる保険の種類や選び方、治療費の実態、活用できる公的制度まで、知っておくべき情報をまとめています。
| 確認したいポイント | 結論 | 詳細 |
| 統合失調症でも保険に入れる? | 引受基準緩和型なら加入の可能性あり | 通常の保険は難しいですが、告知項目が少ない緩和型や無選択型、ぜんち共済なら加入できるケースがあります。 |
| 加入しやすい保険の種類は? | 緩和型・無選択型・ぜんち共済・少額短期 | 引受基準緩和型医療保険が最も現実的な選択肢で、ぜんち共済や少額短期保険も検討できます。 |
| 統合失調症の治療費はいくら? | 自立支援医療で自己負担を1割に軽減可能 | 通院・薬代は自立支援医療を利用すれば月数千円程度に抑えられます。入院時は高額療養費制度が使えます。 |
| 使える公的制度はある? | 自立支援医療・障害者手帳・障害年金など | 医療費軽減のほか、税制優遇、障害年金の受給など複数の公的支援制度を活用できます。 |
この記事でわかること
・統合失調症でも加入できる保険の種類と、それぞれの特徴や注意点
・通常の保険に加入が難しい理由と、加入できる可能性があるケース
・統合失調症の通院・入院にかかる治療費の目安と自立支援医療の活用法
・精神障害者保健福祉手帳や障害年金など活用できる公的制度の概要
・統合失調症の方やご家族が保険を選ぶ際に重視すべきポイント
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統合失調症とはどのような病気か
保険の話に入る前に、統合失調症がどのような病気なのかを正しく理解しておきましょう。病気の特徴や治療内容を把握することで、保険加入時の告知にも正確に対応できるようになります。
統合失調症の症状と特徴
統合失調症は、脳の機能に変化が起こり、思考や感情、行動がまとまりを欠いた状態になる精神疾患です。厚生労働省の定義では、幻覚や妄想などのさまざまな症状を引き起こす病気とされています。
症状は大きく「陽性症状」と「陰性症状」に分けられます。陽性症状には、実際には存在しない声が聞こえる幻聴や、事実とは異なる確信を持つ妄想があります。陰性症状には、意欲の低下、感情の平板化、引きこもりなどがあり、日常生活や社会生活に支障をきたすことがあります。
統合失調症は約100人に1人がかかるとされる身近な病気であり、10代後半から30代前半に発症することが多いですが、どの年齢でも発症する可能性があります。早期の治療開始と継続的な服薬によって、多くの方が症状をコントロールしながら社会生活を送ることができるようになっています。
統合失調症の治療法
統合失調症の治療の中心は、抗精神病薬による薬物療法です。第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)が主流であり、陽性症状だけでなく陰性症状にも効果が期待できる薬が増えています。
薬物療法に加えて、認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング(SST)、デイケアへの通所といったリハビリテーションも重要な治療の柱です。薬を自己判断で中断すると再発リスクが急激に高まるため、医師の指示に従って治療を継続することが最も大切です。
症状が安定しても長期的な服薬が必要になることが多く、治療は年単位から生涯にわたって続くことがあります。そのため、治療費の負担を軽減する公的制度の活用と、民間保険による備えの両面から対策を講じておくことが重要です。
統合失調症だと保険に加入しにくい理由
統合失調症と診断されている方が通常の医療保険や生命保険に加入することは、残念ながら非常に難しいのが現状です。その理由を正しく理解しておきましょう。
精神疾患は再発リスクが高いと評価される
保険会社は加入者間の公平性を保つために、健康状態のリスクを審査した上で加入の可否を判断しています。統合失調症は治療によって症状が安定しても再発の可能性がある慢性疾患と位置づけられており、入院や就労不能になるリスクが健康な方より高いと判断されやすい傾向があります。
そのため、現在症状が出ていない方や、10年以上前に発症して現在は安定している方であっても、通常の保険に加入を断られるケースが少なくありません。
告知項目に該当しやすい
通常の医療保険では、「過去5年以内に精神疾患で治療を受けたか」「現在投薬を受けているか」といった告知項目があります。統合失調症は継続的な通院と服薬を伴うケースがほとんどのため、これらの項目に該当してしまい、加入を断られることになります。
ただし、保険会社ごとに引受基準は異なります。すべての保険会社で一律に断られるわけではないため、複数社に問い合わせてみることが大切です。
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統合失調症の方が加入できる保険の種類
通常の保険への加入が難しい場合でも、統合失調症の方が検討できる保険は複数あります。ここでは主な選択肢を紹介します。
引受基準緩和型医療保険
引受基準緩和型医療保険は、告知項目が2〜5項目に絞られた医療保険で、統合失調症の方にとって最も現実的な選択肢のひとつです。代表的な告知項目は「過去3か月以内に入院・手術をすすめられたか」「過去2年以内に入院・手術をしたか」といった内容です。
統合失調症で通院・服薬中であっても、これらの項目に該当しなければ加入できる可能性があります。保険料は通常の1.5〜2倍程度と割高ですが、加入前の持病による入院も保障する商品もあります。給付金削減期間の有無や保障範囲は商品ごとに異なりますので、複数社を比較して選びましょう。
無選択型医療保険
無選択型医療保険は、健康状態の告知が一切不要で加入できる保険です。引受基準緩和型にも加入できなかった方の選択肢になります。保険料は緩和型よりもさらに割高で、既往症に起因する入院は保障対象外とする商品もあるため、契約条件を細かく確認してください。
ぜんち共済
ぜんち共済は、知的障害・発達障害・精神障害・身体障害のある方を対象とした共済で、統合失調症のある方も加入対象です。告知審査がなく、入院・通院保障のほか、個人賠償責任保障や権利擁護費用保障など、障害のある方の生活に寄り添った保障内容が特徴です。保険料も比較的手頃なため、統合失調症の方にとって有力な選択肢です。
少額短期保険
少額短期保険は保険期間が1〜2年と短く保険金額も限定的ですが、引受基準がゆるやかで加入しやすい傾向があります。メインの保障ではなく、既存の保障を補完する目的で検討するとよいでしょう。更新型が多く更新ごとに保険料が上がる可能性がある点にも注意が必要です。
統合失調症の治療費はどのくらいかかるのか
統合失調症は長期にわたる治療が必要な疾患であり、治療費の負担は無視できません。通院治療と入院治療に分けて費用の目安を確認しておきましょう。
通院治療の費用目安
| 治療内容 | 月額自己負担(3割) | 自立支援医療利用時(1割) |
| 通院+抗精神病薬1〜2種類 | 約5,000〜15,000円 | 約1,700〜5,000円 |
| 通院+薬+デイケア | 約15,000〜30,000円 | 約5,000〜10,000円 |
| 入院(急性期・1か月) | 約15万〜30万円 | 高額療養費制度で軽減可 |
※上記は概算です。使用する薬の種類や検査頻度、医療機関によって金額は異なります。
統合失調症の通院治療で最も大きな効果を発揮するのが、自立支援医療制度(精神通院医療)です。この制度を利用すると外来の医療費が3割負担から1割負担に軽減されます。さらに、所得に応じて月額の自己負担上限額が設定されるため、治療費の見通しが立てやすくなります。まだ利用していない方は、お住まいの市区町村の窓口で早めに申請しましょう。
入院が必要になるケース
統合失調症で入院が必要になるのは、急性期の症状(強い幻覚・妄想・興奮状態など)が出現した場合や、薬の調整が必要な場合、自傷や他害のリスクがある場合などです。
厚生労働省のデータでは精神疾患の入院患者の中で統合失調症が最も多く、入院が長期化するケースもあります。ただし近年は早期治療の普及により入院期間は短縮傾向にあり、退院後は地域での生活を支える体制が整ってきています。入院費用は高額療養費制度を利用すれば月ごとの自己負担を上限額内に抑えられます。
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統合失調症の方が活用できる公的制度
統合失調症の方が利用できる公的制度は複数あります。民間の保険だけでなく、公的制度を最大限に活用することで経済的な負担を大幅に軽減できます。
自立支援医療制度(精神通院医療)
自立支援医療制度は、統合失調症をはじめとする精神疾患の通院治療にかかる医療費の自己負担を3割から1割に軽減する制度です。対象は精神疾患で通院治療を継続する必要がある方で、申請はお住まいの市区町村の窓口で行います。有効期間は1年間で毎年更新が必要ですが、診断書の提出は2年に1度です。
所得に応じて月額の自己負担上限額も設定されます。たとえば、市町村民税の課税額に応じて月2,500円、5,000円、10,000円、20,000円といった上限が設けられており、これを超える分は公費で負担されます。
精神障害者保健福祉手帳
統合失調症のある方は精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。手帳の等級は1〜3級に分かれ、症状の重さや日常生活への影響度によって判定されます。手帳を取得すると、所得税・住民税の障害者控除、公共交通機関の割引、障害者雇用枠での就職支援など、さまざまな優遇措置が受けられます。
障害年金
統合失調症により日常生活や就労に著しい制限がある場合は、障害年金を受給できる可能性があります。障害基礎年金は1級・2級、障害厚生年金は1〜3級の区分があり、等級によって受給額が異なります。
統合失調症の場合、障害基礎年金2級で年額約78万円(令和5年度)、1級で約98万円が支給されます。厚生年金に加入している方は、これに加えて障害厚生年金が上乗せされます。初診日から1年6か月経過後に申請が可能ですので、該当する方は年金事務所に相談しましょう。申請時の診断書が重要になるため、主治医に日常生活の状況をしっかり伝えておくことが大切です。
傷病手当金
会社員の方が統合失調症で仕事を休んだ場合、健康保険から傷病手当金が支給されます。標準報酬日額の3分の2が最長1年6か月間支給されるため、療養中の収入減少を補う大きな助けになります。
統合失調症の方が保険を選ぶ際のポイント
まずは引受基準緩和型から検討する
統合失調症の方が民間保険を検討する場合、まずは引受基準緩和型医療保険への加入を検討しましょう。告知項目に該当しなければ加入できる可能性があり、保険会社ごとに基準が異なるため、複数社に同時に問い合わせることで最も有利な条件を見つけられます。
持病による入院も保障されるか確認する
引受基準緩和型医療保険の中には、加入前の持病(統合失調症)による入院も保障する商品と、保障対象外とする商品があります。統合失調症は急性増悪による入院の可能性があるため、持病による入院も保障される商品を選ぶことが重要です。
公的制度との併用で効率的に備える
統合失調症の治療費は自立支援医療制度で大幅に軽減できるため、民間保険では自立支援医療でカバーできない部分に焦点を当てましょう。具体的には、入院時の差額ベッド代や食事代、急な入院に伴う生活費、就労不能時の収入補填などが該当します。公的制度と民間保険を組み合わせることで、保険料を抑えながら必要な備えを確保できます。
ご家族による代理申請や支援も検討する
統合失調症の症状によっては、ご本人が保険の検討や手続きを行うことが難しい場合もあります。そのような場合は、ご家族が代わりに情報収集や相談を行い、ご本人の状況に合った保険を選ぶことも大切です。保険の相談窓口では、ご家族からの相談にも対応してもらえます。
告知は正確に行う
統合失調症の診断歴や治療状況を隠して保険に加入すると告知義務違反になり、保険金が支払われない原因になります。診断時期、現在の治療内容、服薬状況、入院歴の有無などを正確に申告しましょう。正しい告知が確実に保障を受け取るための大前提です。
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統合失調症と就労・日常生活における保険の考え方
統合失調症のある方にとって、保険選びは医療費への備えだけでなく、就労や日常生活全般のリスクに備える視点も重要です。
就労への影響と備え方
統合失調症の症状が安定していても、ストレスや環境の変化をきっかけに症状が悪化し、休職や離職を余儀なくされるケースがあります。就業不能保険に加入していれば、病気で働けなくなった期間の収入減少を補うことができます。
引受基準緩和型の就業不能保険も一部提供されていますが、精神疾患による就業不能は保障対象外とする商品が多い点には注意が必要です。加入前に精神疾患が保障範囲に含まれるかを必ず確認しましょう。あわせて、傷病手当金(会社員の場合)や障害年金など公的制度との併用も検討してください。
日常生活のリスクに備える
統合失調症の症状によっては、判断力が低下した状態で行動してしまい、自身がケガをしたり他人に損害を与えてしまうリスクがあります。ぜんち共済には個人賠償責任保障が含まれており、こうした日常生活のトラブルにも対応しています。
また、成年後見制度や日常生活自立支援事業を利用することで、財産管理や契約手続きのサポートを受けることもできます。お住まいの地域の社会福祉協議会や精神保健福祉センターに相談すれば、利用できるサービスを案内してもらえます。
発症前に保険に加入しておくことの重要性
統合失調症は発症後に保険加入の選択肢が大幅に狭まる疾患です。精神的な不調を感じている段階や、家族に統合失調症の方がいて遺伝的なリスクが気になる方は、健康なうちに医療保険や生命保険に加入しておくことが最善の備えになります。
発症前に加入した保険であれば、発症後も保障は継続されます。将来的なリスクに備えて、早めの行動を心がけましょう。
まとめ
統合失調症と診断されても、保険に加入できないわけではありません。引受基準緩和型医療保険、無選択型医療保険、ぜんち共済、少額短期保険など、統合失調症の方でも加入できる保険商品は複数用意されています。症状が安定していても通常の保険への加入は困難ですが、緩和型であれば告知項目に該当しなければ加入できる可能性がありますので、あきらめずに複数の保険会社に問い合わせてみましょう。
治療費については、自立支援医療制度を利用することで通院にかかる自己負担を大幅に軽減できます。あわせて、精神障害者保健福祉手帳の取得や障害年金の申請も検討し、公的制度をフル活用しましょう。民間保険は、公的制度でカバーしきれない入院時の自己負担や生活費の補填に焦点を当てた設計にすると、保険料を抑えながら必要な備えを確保できます。
保険選びに迷った場合は、専門家に相談することをおすすめします。ご本人だけでなく、ご家族からの相談にも対応してもらえますので、一人で悩まずまずは相談してみてください。早めの情報収集と行動が、将来の安心につながります。
出典:厚生労働省「統合失調症」(https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_into.html)