保険・お金のコラム

生命保険の乗り換えで損をしないために|判断基準と手順、注意点を解説

保険料の負担が重い、更新で金額が上がった、もっと条件の良い商品が出ている。こうした理由から、今の生命保険を別の商品に乗り換えたいと考える人は少なくありません。

ただし乗り換えは、単純に新しいほうが有利とは限りません。年齢が上がっている分だけ保険料は高くなりますし、健康状態によっては新しい契約に加入できないこともあります。

この記事では、乗り換えの仕組みから、メリットと見落としやすいデメリット、失敗しない手順、そして勧められたときに確認すべき点までを整理します。判断の材料として使ってください。

 

確認したいポイント 結論 詳細
生命保険の乗り換えとは? 解約と新規加入の組み合わせ 今の契約をやめて別の契約に入り直すことで、転換制度とは仕組みが異なります。
乗り換えると得をする? 条件しだいでは損にもなる 保険料が下がることもあれば、年齢や健康状態によって不利になることもあります。
注意すべき点は? 加入できない可能性がある 健康状態によっては新しい契約に入れず、無保険の状態になるおそれがあります。
どんな手順で進める? 新契約の成立を確認してから 保障が始まる前に古い契約を解約すると、保障の空白期間が生じてしまいます。

 

この記事でわかること

  • 乗り換えと転換制度の違い、そして解約以外の見直し方法
  • 乗り換えを検討するきっかけになりやすい4つの場面
  • 保険料や保障内容の面で得られるメリット
  • 無保険期間や予定利率の喪失など、見落としやすい5つのデメリット
  • 失敗を防ぐための手順と、勧められたときに確認すべきこと

 

乗り換えるべきか、数字を出してから決めませんか
今の契約と新しい商品を並べて比べないと、有利かどうかは判断できません。加入中の証券を持ち込んでいただければ、その場で比較できます。

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生命保険の乗り換えとは

乗り換えとは、今加入している契約を解約し、別の保険に新しく加入し直すことを指します。同じ保険会社の別の商品に移る場合も、他社の商品に移る場合も含まれます。

見直しの手段としては分かりやすい方法ですが、今の契約が持っている条件をすべて手放すことになる点は理解しておく必要があります。

まずは、似ているようで異なる仕組みとの違いから整理します。

転換制度との違い

転換は、今の契約の責任準備金や積立部分を、新しい契約の一部に充てる仕組みです。下取りに例えられることがあります。

乗り換えでは解約返戻金が現金で手元に戻りますが、転換では新契約の保険料に充当されます。そのため月々の保険料が抑えられたように見えますが、実質的には旧契約の積立部分を使っているだけです。

どちらの方法でも新しい契約として扱われるため、予定利率はその時点の水準に切り替わります。この点は共通しています。

解約しない見直し方法もある

保険料の負担が理由なら、契約を残したまま調整する方法があります。保険金額の減額、特約の削除、払済保険への変更などです。

減額は保険の一部を解約して保険金額を下げる方法で、残した部分の条件はそのまま維持されます。特約の削除は、主契約を残したまま医療特約や定期保険特約だけを外す方法です。

払済保険への変更は、以後の保険料の払い込みをやめ、その時点の解約返戻金をもとに保障額を減らした契約に切り替えるものです。乗り換えを検討する前に、これらの選択肢も比べてみてください。

特約を追加するという方法

保障が足りないことが理由なら、今の契約に特約を追加する中途付加という方法があります。医療特約やがん特約などを、契約を続けたまま付け足す仕組みです。

主契約の予定利率や経過年数をそのまま維持できるため、有利な契約を持っている人には有力な選択肢になります。ただし追加時点で健康状態の告知が必要になり、商品によっては取り扱いがありません。

足りない保障だけを別の会社の商品で確保するという方法もあります。今の契約を残したまま上乗せする形なら、失うものはありません。

 

乗り換えを検討したくなる場面

そもそもなぜ乗り換えを考えるのか。きっかけを整理すると、本当に乗り換えが必要なのかが見えてきます。

代表的な4つの場面を挙げます。

更新で保険料が上がった

定期保険や定期保険特約は、10年や15年ごとに自動更新される設計になっていることがあります。更新のたびにその時点の年齢で保険料が計算し直されるため、負担が急に増えます。

この場合、まず確認したいのは何が保険料を押し上げているかです。特約部分が原因なら、その特約だけを外すことで解決できるかもしれません。

主契約自体が割高になっているなら、乗り換えを検討する意味が出てきます。

家族構成やライフステージが変わった

結婚、出産、住宅の購入、子どもの独立といった節目では、必要な保障額が大きく変わります。子どもが独立した後も加入当時のままの死亡保障を続けているケースは珍しくありません。

住宅を購入して団体信用生命保険に加入したなら、住居費に相当する分の死亡保障は不要になっている可能性があります。

必要な保障が減っているだけであれば、減額で対応できることも多くあります。

保障内容が今の医療に合っていない

20年以上前に契約した医療保障では、入院給付金の支払開始が5日目からといった条件になっていることがあります。入院が短期化している現在の医療事情には合いません。

また、1回の入院で支払われる日数の上限や、通算の限度日数も古い設計のままになっていることがあります。

この場合は乗り換えに合理性があります。ただし主契約が有利な条件であれば、医療保障だけを別に確保する方法も検討してください。

予定利率が上がっている

長く続いた低金利からの転換を受けて、生命保険各社が予定利率を引き上げる動きが出ています。貯蓄性のある商品では、条件が改善したものも登場しています。

ただし比較すべきは、今の契約の予定利率です。1990年代前半までに契約したものであれば、現在の商品より高い水準である可能性が高くなります。

予定利率は保険会社や商品ごとに異なり、改定も随時行われます。最新の条件を確認したうえで比べてください。

 

本当に乗り換えが必要か、一度整理しませんか
保険料を下げたいだけなら、減額や特約の削除で解決できることもあります。目的を確認したうえで、最も負担の少ない方法を提案します。

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乗り換えで得られるメリット

乗り換えには相応の利点があります。条件が合えば、負担を減らしながら保障を厚くできることもあります。

主なメリットを3つ整理します。

保険料を下げられる可能性がある

掛け捨ての定期保険や医療保険では、同じ保障内容でも新しい商品のほうが保険料が安いことがあります。医療技術の進歩や平均寿命の伸びが保険料の計算に反映されるためです。

特に喫煙状況や健康状態によって保険料が割り引かれる商品では、条件を満たせば大きく下がることがあります。健康診断の結果が良好な人にとっては検討する価値があります。

ただし年齢が上がっている分は不利に働きます。実際の見積もりを取って比べることが欠かせません。

保障内容を今の医療事情に合わせられる

最近の医療保険では、日帰り入院から給付の対象になる、入院一時金がまとまって受け取れる、通院にも対応するといった設計が主流です。

がんの治療についても、抗がん剤治療や放射線治療に対応する保障が用意されるようになりました。通院中心の治療が増えている現状に合った内容です。

古い契約では給付の対象にならない治療が、新しい商品ならカバーされることがあります。

複数の契約を整理できる

加入した時期がばらばらで、契約が何本もあるという状態はよくあります。保障が重複していたり、逆に必要な部分が抜けていたりすることも珍しくありません。

乗り換えを機に全体を組み直せば、管理がしやすくなります。請求漏れを防ぐという意味でも、契約数は少ないほうが把握しやすくなります。

ただし整理を優先しすぎて、有利な契約まで手放してしまわないよう注意してください。

 

見落としやすいデメリット

乗り換えで問題になるのは、判断した時点では気づきにくい不利益です。契約してから気づいても取り返しがつきません。

特に注意したい5つを挙げます。

年齢が上がった分だけ保険料は高くなる

保険料は加入時の年齢をもとに計算されます。同じ商品であっても、10年後に入り直せばその分だけ保険料は上がります。

新商品のほうが割安に見えても、年齢の上昇分を吸収できるとは限りません。特に40代以降では、この影響が大きくなります。

比較するときは、今の契約をこのまま続けた場合の総支払額と、乗り換えた場合の総支払額を並べてください。

健康状態によっては加入できない

新しい契約に申し込むときは、改めて健康状態を告知します。持病がある、健康診断で指摘を受けた、通院しているといった事情があると、加入を断られることがあります。

条件付きでの引受になる場合もあります。特定の部位が一定期間保障の対象外になる、保険料が割増になるといった形です。

今の契約を先に解約してしまうと、新しい契約に入れず無保険になるおそれがあります。これが乗り換えで最も大きなリスクです。

予定利率の高い契約を失う

予定利率は契約した時点の水準で固定され、その後の金利変動によって変わりません。1996年3月以前に契約した貯蓄性のある保険は、現在では手に入らない条件になっている可能性があります。

こうした契約を解約したり転換したりすると、その権利は失われます。保険料が高いと感じても、貯蓄性まで含めて評価すると有利なままというケースがあります。

終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険が該当しやすいタイプです。契約日と予定利率を確認してから判断してください。

免責期間や支払削減期間が再スタートする

がん保険には、契約から90日間などの免責期間が設けられているのが一般的です。乗り換えるとこの期間が最初からやり直しになります。

引受基準緩和型の商品では、契約から1年間は給付金が半額になるといった支払削減期間が設定されていることもあります。

長く加入してきた契約ほど、こうした期間はとっくに経過しています。乗り換えは、その積み重ねをリセットする行為でもあります。

解約返戻金が元本を割り込むことがある

貯蓄性のある保険では、契約から一定期間内に解約すると、払い込んだ保険料の総額を下回る金額しか戻らないことがあります。

解約返戻金は年数の経過とともに増えていくため、途中で解約するほど不利になります。あと数年で払込満了という段階であれば、続けたほうが有利なこともあります。

解約する前に、現時点の解約返戻金額を保険会社に照会してください。数字を見てから判断すれば、後悔を減らせます。

新しい契約も更新型なら将来また上がる

乗り換え先を選ぶときに見落としやすいのが、その商品が更新型かどうかです。更新型は加入時の保険料が安く見えますが、更新のたびに保険料が上がっていきます。

目先の保険料の安さで選ぶと、10年後に同じ悩みを繰り返すことになります。全期間の保険料が変わらない全期型と比べて、総支払額がどうなるかを確認してください。

何歳まで保障が必要なのかを先に決めておくと、どちらを選ぶべきかの判断がしやすくなります。

 

解約する前に、失うものを確認しませんか
予定利率、免責期間の経過、解約返戻金の水準。乗り換えで手放すものを一覧にしたうえで、それでも進めるべきかを一緒に判断します。

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失敗しないための手順

乗り換えは、進める順番を間違えると取り返しがつきません。必ず守るべきなのは、新しい契約の保障が始まってから古い契約を解約するという順序です。

具体的な流れを4つのステップで説明します。

手順1 今の契約を正確に把握する

まず保険証券を集め、契約日、保険の種類、保険金額、保険料、払込期間、予定利率、特約の内容を書き出します。

証券に記載がない項目は、保険会社に照会すれば確認できます。特に予定利率と現時点の解約返戻金額は、判断に直結する情報です。

複数の契約がある場合は、一覧表にすると全体像がつかめます。

手順2 必要な保障額を計算し直す

次に、今の家族構成と家計をもとに必要保障額を算出します。加入当時の金額をそのまま引き継がないことが大切です。

死亡保障であれば、遺族年金や配偶者の収入、貯蓄額を差し引いたうえで、不足する金額を計算します。住宅ローンに団体信用生命保険が付いているなら、その分は除いて考えます。

この計算をせずに商品だけを比べると、必要以上の保障を買ってしまうことになります。

手順3 新しい契約を比較して申し込む

必要な保障額が決まったら、複数の商品を比較します。保険料だけでなく、給付の条件、免責事項、払込期間まで並べて確認してください。

見積もりの段階では健康状態の審査は行われません。実際に加入できるかどうかは、申し込んで告知したうえでの審査結果で決まります。

この時点ではまだ古い契約は解約しません。

手順4 保障が始まったことを確認してから解約する

新しい契約の責任開始日を迎え、保険証券が届いたことを確認してから、古い契約の解約手続きに進みます。

責任開始日は、申込み、告知、第1回保険料の払い込みがすべて完了した時点とされるのが一般的です。商品によって扱いが異なるため、いつから保障が始まるのかを必ず確認してください。

この順序を守れば、審査に通らなかった場合でも今の契約が残ります。保障の空白期間を作らないことが、乗り換えで最も重要な原則です。

出典:公益財団法人 生命保険文化センター「生命保険の契約にあたっての手引」

 

乗り換えを勧められたときに確認すること

自分から検討する場合だけでなく、担当者から提案されることもあります。提案の内容が自分にとって有利かどうかは、冷静に確かめる必要があります。

確認すべき点を整理します。

不利益となる事実の説明は法律上の義務

保険業法300条1項4号は、不利益となるべき事実を告げずに、すでに成立している契約を消滅させて新しい契約を申し込ませる行為を禁止しています。

健康状態によっては加入できない場合があること、予定利率が変わること、解約返戻金が元本を下回る可能性があること。こうした点は説明されるべき内容です。

メリットばかりが強調されていると感じたら、不利益になる点を具体的に質問してください。答えられないような提案であれば、その場で決める必要はありません。

出典:法務省 日本法令外国語訳データベースシステム「保険業法」

比較表を出してもらう

口頭の説明だけでは判断できません。今の契約と新しい契約を並べた比較表を書面で出してもらうよう依頼してください。

比較すべき項目は、保険料、保障内容、保険期間、払込期間、予定利率、解約返戻金の推移です。総支払額まで含めて並べると、差が見えやすくなります。

書面が残っていれば、後から見返すこともできます。その場で結論を出さず、持ち帰って検討する時間を取ってください。

転換を勧められた場合は特に慎重に

転換は、保険料の負担が変わらないように見える形で提案されることがあります。しかし実際には旧契約の積立部分が新契約に充てられているため、資産を取り崩していることになります。

加えて予定利率が転換時点の水準に切り替わるため、有利な条件を失う可能性があります。転換前の契約の予定利率がいくつだったかは、必ず確認してください。

一度転換すると元の契約に戻すことは原則できません。判断に迷うなら、第三者に相談してから決めることをおすすめします。

 

提案の内容が妥当か、第三者の目で確認しませんか
特定の会社の商品に寄らない立場で、今の契約と提案されている商品を比べられます。持ち帰った資料をそのまま持ち込んでいただいて構いません。

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税金と手続き上の注意点

乗り換えの前後では、税金や控除の扱いも変わります。見落とすと想定外の負担が生じることがあります。

押さえておきたい3点を挙げます。

解約返戻金は一時所得になる

解約して受け取ったお金が、払い込んだ保険料の総額を上回った場合、その差額は一時所得として課税の対象になります。

計算は、受取総額から払込保険料を差し引き、さらに特別控除50万円を引いた金額の2分の1です。増えた金額が50万円以下であれば課税されません。

給与所得者の場合、給与と退職所得以外の所得が20万円を超えると確定申告が必要になります。長く続けた貯蓄性の契約を解約する際は、事前に金額を確認しておいてください。

出典:国税庁「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」

生命保険料控除の扱いが変わる

2011年12月以前に契約した保険は旧制度、2012年1月以降の契約は新制度が適用されます。乗り換えると新制度の対象になり、控除の枠組みが変わります。

旧制度は一般生命保険料と個人年金保険料の2区分で、新制度は介護医療保険料が加わった3区分です。控除できる限度額もそれぞれ異なります。

旧契約を残したほうが控除額が大きくなるケースもあります。年末調整や確定申告への影響も含めて確認しておくと安心です。

申し込んだ後でも撤回できる

申し込んだ後に考えが変わった場合、クーリングオフによって申込みを撤回できる制度があります。

申込日または契約内容を記載した書面を受け取った日のいずれか遅い日から、その日を含めて8日以内に書面や電磁的方法で通知することが要件です。会社によってはこれより長い期間を設けていることもあります。

ただし、医師の診査を受けた後などは対象外になる場合があります。この記事の内容は一般的な取り扱いを整理したものです。個別の契約については、約款の記載と保険会社への確認を優先してください。

 

まとめ

生命保険の乗り換えは、保険料を下げたり保障を最新の内容にしたりできる一方で、失うものも大きい選択です。年齢が上がった分の保険料上昇、健康状態による引受不可、予定利率の喪失、免責期間の再スタートが主なものです。

保険料の負担が理由であれば、減額、特約の削除、払済保険への変更といった方法で解決できることもあります。まずは解約以外の選択肢を検討してください。

進める場合に絶対に守りたいのが、新しい契約の保障が始まったことを確認してから古い契約を解約するという順序です。逆にすると、無保険の期間が生じるおそれがあります。

勧められた場合は、不利益となる事実まで説明を受けたうえで、比較表を書面で受け取ってから判断してください。その場で決める必要はありません。判断に迷うなら、特定の会社に寄らない立場の専門家に相談してみてください。

 

乗り換えの判断、ひとりで抱えないでください
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