医療保険は日帰り手術でも給付金が出る?対象になる手術と日帰り入院との違いを解説
医療技術の進歩により、入院せずにその日のうちに帰宅できる日帰り手術が年々増えています。そこで気になるのが、「日帰り手術でも医療保険の給付金は受け取れるのか」という点ではないでしょうか。結論からいえば、医療保険は日帰り手術でも、所定の条件を満たせば手術給付金を受け取れます。
ただし、「日帰り手術」と「日帰り入院」は同じではなく、混同すると給付金をもらいそびれることもあります。本記事では、医療保険で日帰り手術が給付の対象になる条件や、受け取れる金額の考え方、対象にならないケース、給付金の請求手順までをわかりやすく解説します。日帰り手術を控えている方や、医療保険の見直しを考えている方はぜひ参考にしてください。
医療保険は日帰り手術でも手術給付金を受け取れる
判断されるのは「入院の有無」ではなく「対象手術かどうか」
結論として、医療保険は日帰り手術であっても、その手術が約款で定める「所定の手術」に該当すれば、手術給付金を受け取れます。入院を伴うかどうかにかかわらず、手術そのものが給付の対象であれば請求できるのが一般的です。
「入院しなかったから請求できない」と思い込んで請求しないままにしてしまうケースは少なくありません。手術を受けたら、入院の有無にかかわらず、まず契約内容を確認するという習慣を持っておくとよいでしょう。
増えている日帰り手術の例
近年は、白内障手術や大腸ポリープの切除、鼠径ヘルニアなど、入院せずに日帰りで行われる手術が増えています。ほかにも、下肢静脈瘤の手術、痔の手術、乳腺の一部の手術、内視鏡による胃・食道の粘膜切除なども日帰りや1泊で行われることがあります。
こうした日帰り手術も、対象となる手術であれば手術給付金の支払い対象です。ただし、すべての日帰り手術が対象になるわけではなく、保険商品や手術の種類によって取り扱いが異なる点には注意が必要です。
なぜ日帰り手術が増えているのか
内視鏡や腹腔鏡といった体への負担が少ない手術方法が広がり、麻酔や術後管理の技術も向上したことで、入院しなくても安全に手術を受けられるケースが増えました。医療費の効率化という観点から、入院日数を短くする方向に医療全体が動いていることも背景にあります。
この変化は、医療保険の設計にも影響しています。かつては「入院日数×日額」で保障を組むのが基本でしたが、入院が短くなれば入院給付金の総額は小さくなります。日帰り手術が増えている今、手術給付金や入院一時金の重要性が相対的に高まっているのです。
「日帰り手術」と「日帰り入院」は別物|給付金の違い
医療保険の給付金を考えるうえで最も誤解されやすいのが、「日帰り手術」と「日帰り入院」の違いです。この2つを混同すると、本来受け取れる給付金をもらいそびれる可能性があります。医療保険の給付金は、主に「手術給付金」と「入院給付金」の2種類に分けて考えるのがポイントです。
| 給付金の種類 | 支払いの判断基準 | 日帰り手術での扱い |
| 手術給付金 | 約款所定の手術に該当するか | 対象の手術なら入院がなくても受け取れる |
| 入院給付金 | 「入院」に該当するか(入院基本料の有無) | 入院基本料の算定があれば対象、外来扱いなら対象外 |
手術給付金は「入院の有無」に関係なく対象になりうる
手術給付金は、入院したかどうかではなく、受けた手術が約款の対象手術に該当するかどうかで判断されます。そのため、日帰り手術で入院していなくても、対象の手術であれば手術給付金を受け取れます。
ただし、商品によっては入院を伴わない手術(外来手術)の給付額を、入院を伴う手術より低く設定していることがあります。「受け取れるかどうか」と「いくら受け取れるか」は別の話なので、両方を確認しておきましょう。
入院給付金は「入院基本料」が算定されているかがカギ
一方、入院給付金が支払われるかどうかは、「入院」に該当するかで判断されます。その分かれ目になるのが、医療機関で「入院基本料(入院料等)」が算定されているかどうかです。同じ日に入退院する「日帰り入院」として入院基本料が算定されていれば入院給付金の対象になりますが、外来手術(通院扱い)の場合は入院給付金の対象外となります。
つまり、同じ手術を同じ日数で受けても、医療機関の請求区分が入院か外来かによって入院給付金の可否が変わります。この判断は医療機関が診療報酬のルールに沿って行うものなので、患者側で選べるものではありません。
診療明細書のどこを見ればよいか
自分のケースが入院扱いかどうかは、医療機関から受け取る領収書や診療明細書で確認できます。領収書の項目に「入院料等」の欄があり、そこに点数が記載されていれば入院として扱われています。
診療明細書には、実施された診療行為が点数とともに一覧で記載されています。手術についても「手術」の区分に点数が記載されているため、どの手術が行われたのかを確認する資料になります。これらの書類は給付金の請求で必要になることがあるため、手術を受けたら必ず保管しておきましょう。
対象になる手術の決まり方は契約時期で2タイプある
手術給付金の対象手術をどう定めているかは、契約した時期によって大きく2つのタイプに分かれます。自分の契約がどちらなのかを知っておくと、判断がつきやすくなります。
公的医療保険連動型(現在の主流)
公的医療保険の医科診療報酬点数表で「手術料」の算定対象と定められている手術を、給付の対象とするタイプです。対象となる手術は約1,000種類にのぼり、現在販売されている医療保険ではこのタイプが主流です。
このタイプの利点は、公的医療保険で手術として扱われるものが原則として給付対象になるため、判断が分かりやすい点です。また、医療技術の進歩によって新しい手術が公的医療保険の対象になれば、それに合わせて給付対象も広がります。反面、制度改正によって対象が変わることもあります。
約款所定88種類(89種類)型
保険会社が約款のなかで対象手術を列挙しているタイプです。88種類(骨髄幹細胞採取手術を含めて89種類とするものもあります)と表記されるのが一般的で、以前販売されていた医療保険に見られます。
88種類という数え方は複数の手術をまとめて1種類として数えているため、実際にカバーされる手術は数百種類に及び、一般的な手術はおおむね対象になります。ただし公的医療保険の対象手術と完全には一致しないため、「公的医療保険では手術なのに約款の対象に入っていない」というずれが生じることがあります。古い契約をお持ちの方は、約款で確認しておきましょう。
どちらのタイプでも対象外になりやすい手術
連動型であっても、公的医療保険の対象手術がすべて給付対象になるわけではありません。多くの商品で対象外とされているのは、傷の処理(創傷処理、デブリードマン)、切開術、骨または関節の非観血的整復術・非観血的整復固定術・非観血的授動術、抜歯手術、そして診断や検査を直接の目的とする手術です。
これらは治療の程度が比較的軽いものや、検査に付随するものが中心です。「手術」という言葉が使われていても給付対象外になることがあるため、請求前に確認しておくと無駄な手間を避けられます。
日帰り手術でもらえる手術給付金はいくら?
手術給付金の金額の決まり方には、大きく分けて2つのタイプがあります。加入している医療保険がどちらのタイプかを確認しておきましょう。
倍率タイプ(入院給付金日額 × 手術倍率)
入院給付金日額に、手術の種類ごとに定められた倍率を掛けて金額が決まるタイプです。計算式は次のとおりです。
手術給付金 = 入院給付金日額 × 手術の種類に応じた倍率
たとえば入院給付金日額が1万円で、受けた手術の倍率が10倍であれば、手術給付金は10万円です。倍率は手術の種類や重さによって異なり、日帰り(外来)手術の倍率を入院手術より低めに設定している商品もあります。
固定額(一律)タイプ
手術の種類にかかわらず、1回につき一定額を支払うタイプです。「日帰り手術なら一律5万円」「入院を伴う手術なら一律10万円」というように、入院の有無で金額を分けているケースもあります。シンプルで分かりやすい一方、手術の種類による差がない点が特徴です。
支払回数に制限が設けられていることもある
手術給付金には、支払回数の制限が設けられていることがあります。よくあるのは「同じ日に2種類以上の手術を受けた場合は、給付割合の高いいずれか1つのみ」「一連の治療として行われた手術は1回として扱う」「同じ手術については所定の期間(60日など)につき1回まで」といった規定です。
継続的に治療を受ける場合や、複数回に分けて手術を行う場合は、この規定によって受け取れる回数が想定と変わることがあります。治療の見通しが分かった段階で、保険会社に何回まで請求できるかを確認しておくと安心です。
日帰り手術が医療保険の給付対象にならないケース
日帰り手術でも、次のようなケースでは手術給付金が支払われないことがあります。請求前に確認しておきましょう。
治療を目的としない手術
美容整形や、近視矯正を目的としたレーシックなどは、治療を目的としないため対象外です。また、検査のみを目的とした内視鏡検査も対象になりません。
ただし、内視鏡による検査の際にポリープを切除した場合など、検査に付随して治療が行われたときは、その治療部分について手術料が算定され、給付対象になることがあります。「検査だったから対象外」と決めつけず、診療明細書を確認してみてください。
約款で対象外とされている手術
創傷処理、皮膚切開、抜歯、骨の徒手整復など、対象外と定められている手術があります。前述のとおり、公的医療保険連動型でもこれらは除外されているのが一般的です。
加入前から予定・発症していた手術
保険の加入前にすでに発症していた病気の手術や、加入前から予定していた手術は対象外になる場合があります。また、医療保険には契約から一定期間の免責が設けられている商品もあります。
「手術をすすめられたので、それから医療保険に加入して請求する」ということはできません。加入時に告知すべき事実を伝えていなかった場合は、告知義務違反として契約が解除される可能性もあります。
同一手術の短期間での再施術
一連の治療として、一定期間内に複数回受けた手術は1回分のみの支払いとなることがあります。前の章で触れた支払回数の制限に該当するケースです。
いずれのケースも、最終的な判断は商品の約款によって異なります。迷ったら自己判断で諦めず、診療明細書を手元に置いて保険会社に問い合わせるのが確実です。
日帰り手術で給付金を受け取る手順
日帰り手術を受けたら、給付金を受け取るために次の手順で手続きを進めましょう。請求には期限(一般に支払事由から3年)があるため、早めの対応が安心です。
請求までの4ステップ
第一に、受けた手術の正式な名称を医療機関で確認します(診断書や領収書・診療明細書を用意する)。第二に、その手術が給付の対象になるか、加入している保険会社に確認します。第三に、保険会社から必要書類(給付金請求書・診断書など)を取り寄せます。第四に、書類を記入・準備して保険会社に提出し、審査を経て給付金が支払われます。
手術給付金と入院給付金の両方を請求できる場合もあるため、自分の契約でどちらが対象になるかを確認しておくとよいでしょう。
診断書代の負担にも注意する
保険会社に提出する診断書は、医療機関に作成を依頼し、その費用は自己負担となります。給付額が少額な場合、診断書代のほうが高くついてしまうこともあります。
近年は、少額の給付について診断書の代わりに領収書や診療明細書の提出で済む簡易請求に対応している保険会社が増えています。請求手続きを始める前に、診断書が必要かどうかを保険会社に確認するとよいでしょう。
受け取った給付金の税金と医療費控除
手術給付金や入院給付金は、身体の傷害に基因して支払われるものとして原則非課税です。金額にかかわらず所得税・住民税はかからず、確定申告も必要ありません。
ただし、医療費控除を申告する場合は注意が必要です。医療費控除の計算では、自己負担した医療費から保険金などで補填された金額を差し引くことになっています。手術給付金や入院給付金を受け取った場合は、その給付の対象となった治療の医療費から差し引いて計算してください。
日帰り手術に備えるための医療保険選びのポイント
入院期間の短期化が進み、日帰りや短期入院での手術が増えている今、医療保険もこの変化に対応したものを選ぶことが大切です。
日帰り手術・短期入院に対応しているか確認する
古い医療保険のなかには、一定日数以上の入院を支払い条件にしているものや、日帰り手術を対象外としているものもあります。日帰り手術や日帰り入院でも給付金が受け取れるか、加入中・検討中の保険の保障内容を確認しましょう。
かつては「入院5日目から」「入院8日目から」といった条件が一般的でした。現在は1日目から保障されるのが標準ですが、古い契約では免責日数が残っていることがあります。
入院一時金タイプも選択肢になる
入院日数にかかわらず、入院すればまとまった一時金を受け取れる「入院一時金」タイプの医療保険もあります。日帰り入院や短期入院が増えている現状では、こうした保障が役立つ場面が増えています。
入院日額を高く設定するよりも、一時金で備えるほうが実際の費用の出方に近い場合もあります。短期入院では、日額の給付では差額ベッド代や交通費、食事代といった諸費用をまかないきれないことがあるためです。
先進医療特約の内容は定期的に変わる
先進医療特約は、厚生労働大臣が定める先進医療を受けた場合に技術料を保障するものです。ただし先進医療の対象は定期的に見直され、公的医療保険に組み込まれたり、対象から外れたりします。
代表的な例が、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術です。2020年4月に先進医療の対象から外れ、選定療養に移行したため、それ以降に受けた手術は先進医療給付金の対象になりません。一方、白内障手術そのものは公的医療保険が適用されるため、手術給付金は通常どおり請求できます。自己負担となるのはレンズの差額分です。日帰り手術として代表的な白内障手術だからこそ、この違いは押さえておきたいところです。
古い契約は乗り換える前に内容を確認する
古い医療保険は現在の医療実態に合わない部分がある一方、契約時の年齢で保険料が固定されているため割安な場合もあります。乗り換えを検討する際は、現在の契約で日帰り手術がどう扱われるかを確認したうえで判断しましょう。
乗り換える場合は、新しい保険の契約が成立して保障が始まるまで既存の契約を解約しないことが原則です。健康状態によっては新しい保険に加入できないこともあるため、この順番を守ってください。
医療保険と日帰り手術に関するよくある質問
Q. 日帰り手術なら必ず給付金がもらえますか?
必ずではありません。受けた手術が約款で定める対象手術に該当する場合に手術給付金が支払われます。美容目的や検査目的、対象外と定められた手術は支払われないため、事前に保険会社へ確認しましょう。
Q. 日帰り手術でも入院給付金は受け取れますか?
「入院基本料」が算定される日帰り入院であれば、入院給付金の対象になる可能性があります。外来手術(通院扱い)の場合は入院給付金の対象外です。領収書や診療明細書で入院料の算定を確認しましょう。
Q. 給付金の金額はどこで確認できますか?
加入している医療保険の「約款」や「契約のしおり」、保険会社の公式サイトやマイページで確認できます。手術の倍率や固定額、対象手術の範囲が記載されています。
Q. 白内障の日帰り手術は給付の対象になりますか?
白内障手術(水晶体再建術)は公的医療保険で手術料が算定されるため、連動型の医療保険では手術給付金の対象になるのが一般的です。ただし多焦点眼内レンズを選んだ場合、レンズの差額分は選定療養として自己負担となり、2020年4月以降は先進医療給付金の対象にもなりません。
Q. 何年も前に受けた日帰り手術も今から請求できますか?
請求権の時効は一般に支払事由の発生から3年です。3年以内であれば請求できる可能性があります。過去に受けた手術で請求し忘れているものがあれば、保険会社に問い合わせてみてください。
Q. 両目や左右など、複数箇所を別の日に手術した場合はどうなりますか?
商品の規定によります。それぞれ別の手術として給付される場合もあれば、一連の治療として1回分にまとめられる場合もあります。手術の予定が決まった段階で、保険会社に想定される給付回数を確認しておくと計画が立てやすくなります。
Q. 高額療養費を受けた場合、手術給付金は減額されますか?
減額されません。公的医療保険の高額療養費と民間の医療保険の給付金は別の制度で、それぞれ独立して受け取れます。ただし医療費控除を申告する際は、どちらも医療費から差し引く対象となります。
まとめ
医療保険は、日帰り手術でも約款で定める所定の手術に該当すれば、手術給付金を受け取れます。重要なのは、「日帰り手術」と「日帰り入院」は別物であるという点です。手術給付金は入院の有無に関係なく対象手術であれば支払われ、入院給付金は「入院基本料」が算定される入院に該当するかで判断されます。
受け取れる金額は、入院給付金日額に倍率を掛けるタイプと固定額タイプがあり、美容目的や対象外の手術は支払われません。日帰り手術を受けたら、手術名を確認し保険会社に問い合わせて、忘れずに給付金を請求しましょう。入院期間の短期化が進む今、日帰り手術や短期入院に対応した医療保険を選ぶことが、これからの備えとして大切です。