【育休中】配偶者控除の「デメリット」とは?住民税・手取りへの影響をFPが解説
「育児休業を取得したら、配偶者控除で手取りが増えるはず…」そう思っていませんか?確かに、配偶者控除は世帯の税負担を軽減する制度ですが、育休中の収入状況によっては、思わぬデメリットが生じることも。特に、住民税や将来の負担について、見落としがちな落とし穴があるのをご存知でしょうか?
この記事では、育休を取得中の方や、これから取得を検討している方向けに、配偶者控除の意外なデメリットと、それらを賢く乗り切るための具体的な対策をFPの視点も交えて分かりやすく解説します。この記事を読めば、育休中の経済的な不安を解消し、安心して子育てに専念するための知識が身につきます。
育休中の配偶者控除、基本のおさらい

育児休業中の収入状況(育休手当、給与など)の概要と、配偶者控除・配偶者特別控除の基本的な仕組み、適用条件を解説します。育休中に世帯の税負担を軽減する制度ですが、その基本を正確に理解することが重要です。
育休中の収入(育児休業給付金など)
育児休業中は、原則として会社からの給与は支給されませんが、代わりに「育児休業給付金」が雇用保険から支給されます。この給付金は、育児休業開始から180日目までは休業開始前の賃金の67%、181日目以降は50%が支給されるのが一般的です。
重要な点として、この育児休業給付金は「非課税所得」とされており、所得税や住民税の計算対象にはなりません。そのため、育休中に給付金のみを受け取っている場合、税法上の所得は0円となります。ただし、会社から給与が一部支給される場合や、副業などで別途収入がある場合は、その収入が課税対象となるため注意が必要です。
配偶者控除・配偶者特別控除とは?
配偶者控除と配偶者特別控除は、納税者に所得税法上の控除対象配偶者がいる場合に受けられる所得控除で、納税者本人の所得税や住民税の負担を軽減する制度です。
配偶者控除は、納税者と生計を一つにする配偶者の年間合計所得が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)の場合に適用されます。納税者本人の所得に応じて、最大で所得税38万円、住民税33万円の控除が受けられます。
一方、配偶者特別控除は、配偶者の年間合計所得が48万円を超え、133万円以下(給与収入のみなら103万円超201.6万円未満)の場合に適用される控除です。配偶者の所得額に応じて控除額が段階的に減少し、納税者本人の所得にも制限があります。
育休中に育児休業給付金のみを受け取っている場合、給付金は非課税であるため、税法上の所得は0円となり、配偶者控除の適用条件を満たすケースが多くなります。どちらの控除が適用されるかは、配偶者(育休取得者)のその年の合計所得金額によって決まります。
育休中に配偶者控除を受ける「3つのデメリット」

育児休業中に配偶者控除を適用することは、一見するとメリットばかりのように思えますが、実は見落としがちなデメリットも存在します。ここでは、特に注意したい3つのポイントについて詳しく見ていきましょう。
デメリット1:手取り額への影響(住民税の均等割など)
育休中に配偶者控除を受けることで、世帯全体の所得税が軽減されるのは事実です。しかし、個人の手取り額という視点で見ると、必ずしもメリットばかりではありません。特に注意したいのが「住民税の均等割」です。
住民税には、所得に応じて課される「所得割」と、所得にかかわらず定額で課される「均等割」の2種類があります。配偶者控除によって配偶者(育休取得者)の所得が低くなると、所得税の所得割は減少しますが、住民税の均等割は一定の所得基準(非課税限度額)を超えると課税されます。
例えば、育休手当(非課税)のみで収入がほとんどない場合、配偶者控除がなくても所得税・住民税の所得割は元々発生しません。しかし、育休手当以外のわずかな収入や、前年の所得によっては、住民税の均等割が課税されるケースがあります。この時、配偶者控除を適用しても均等割の金額は変わらないため、所得税の還付額と住民税の負担増を比較すると、結果的に世帯の手取りが想定より減ってしまう可能性も考えられます。
デメリット2:将来の住民税負担増の可能性
育休中に配偶者控除を適用し、配偶者(育休取得者)の所得が大幅に減少した場合、翌年度の住民税に思わぬ影響が出ることがあります。住民税は、原則として前年の所得に対して課税されます。つまり、育休中で所得が低かった年の翌年度は、住民税の負担が軽くなるのが一般的です。
しかし、配偶者控除を適用することで、配偶者(育休取得者)の課税所得がさらに低く見積もられることになります。もし育休明けに職場復帰し、給与所得が大幅に増えた場合、その年の住民税は、育休中の低い所得を基準に計算された住民税額と、復帰後の高い所得に対する住民税額のギャップが大きくなります。
その結果、「育休中はずっと住民税が安かったのに、復帰したら急に高くなった」と感じるケースが少なくありません。これは、配偶者控除によるメリットが、翌年の住民税計算に大きく影響し、復帰後の負担感を増幅させる可能性があるためです。
デメリット3:社会保険料への直接的な影響は限定的だが…
配偶者控除は、所得税法・地方税法に基づく所得控除の一種であり、所得税や住民税の計算に影響を与える制度です。したがって、健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料には、直接的な影響はありません。
育休中の社会保険料については、別途「育児休業期間中の社会保険料免除制度」があるため、この期間は社会保険料の負担が免除されます。
ただし、育休中の給与や賞与の有無(育休手当以外に会社から支給されるもの)は、育休明けの標準報酬月額の決定に影響を与える可能性があります。標準報酬月額は社会保険料の計算基礎となるため、育休中の給与状況によっては、間接的に社会保険料の金額に影響が出る可能性もゼロではありません。しかし、これは配偶者控除とは直接関係なく、あくまで給与所得の有無によるものです。
育休中の税金・社会保険料に関する注意点

育児休業中は、給付金や社会保険料の免除など、税金や社会保険料に関して特別な扱いが適用されます。ここでは、育休中に特に注意すべきポイントについて詳しく解説していきます。
育児休業給付金は非課税でも、控除計算にどう影響?
育児休業給付金は、所得税も住民税も課税対象とならない「非課税所得」です。これは大きなメリットですが、配偶者控除などの所得控除の適用を考える上で重要な意味を持ちます。
非課税所得であるため、育児休業給付金は所得税や住民税の計算における「所得」には含まれません。そのため、給付金のみで生活している場合、多くの方は所得税・住民税が非課税となります。しかし、給付金以外に給与収入などがある場合は、その収入が所得として計算され、配偶者控除などの適用可否や控除額に影響します。
例えば、配偶者控除の適用を受けるためには、控除対象配偶者の年間所得が48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)である必要があります。育児休業給付金は所得に含まれませんが、それ以外のアルバイト収入などがある場合は注意が必要です。
育休中の社会保険料免除制度について
育児休業期間中は、健康保険料と厚生年金保険料が免除される制度があります。これは、将来受け取る年金額にも影響しない、非常に大きなメリットです。
この制度の適用条件は、産前産後休業期間中、または育児休業期間中であることです。会社に申し出ることで、会社側が年金事務所へ手続きを行い、免除が適用されます。社会保険料が免除されても、健康保険の給付(医療費など)は通常通り受けられますし、厚生年金保険の加入期間として扱われるため、将来の年金額が減ることはありません。
ただし、免除期間は育児休業の開始月から終了月の前月までが原則ですが、育児休業の取得状況によっては異なる場合がありますので、会社の担当部署に確認することが大切です。
住民税の支払い方法と育休中の注意点
住民税の支払い方法には、給与から天引きされる「特別徴収」と、自分で納付書を使って支払う「普通徴収」の2種類があります。育休中は給与が減額または停止されるため、住民税の支払い方法に注意が必要です。
通常、会社員の場合は特別徴収で住民税が給与から天引きされています。しかし、育休に入って給与が大幅に減ったり、無給になったりすると、天引きできる金額がなくなるため、会社から役所に連絡が行き、普通徴収に切り替わるケースが多くなります。
この場合、自宅に役所から住民税の納付書が送られてきます。納付書が届いたら、期日までに自分で金融機関などで納付する必要があります。うっかり忘れてしまうと延滞金が発生することもあるため、郵便物のチェックを怠らないようにしましょう。育休明けの住民税の負担増と合わせて、支払い方法の変更にも注意が必要です。
デメリットを回避・軽減するための賢い対策

育休中の配偶者控除がもたらす可能性のあるデメリットを理解した上で、それらを回避したり軽減したりするための具体的な対策を講じることが重要です。ここでは、賢い家計管理と適切な控除選択のポイント、そして専門家への相談メリットについて解説します。
育休中の収入・支出シミュレーションの重要性
育児休業期間は、世帯全体の収入が大きく変動する時期です。そのため、事前に収入と支出のシミュレーションを行うことが、経済的な不安を解消し、計画的な育休生活を送る上で不可欠となります。
シミュレーションでは、まず育児休業給付金や、育休を取得しない配偶者の給与など、育休中の世帯収入を正確に把握します。次に、出産・育児に伴う一時的な出費(出産準備品、ベビー用品など)や、育休中の変動費(おむつ代、ミルク代、レジャー費など)、固定費(住宅ローン、保険料など)といった支出を洗い出します。
これらの数値を具体的に計算することで、月々の収支バランスが見えてきます。もし赤字になるようであれば、早めに家計の見直しや節約計画を立てたり、貯蓄からの補填計画を立てたりすることができます。シミュレーションを通じて、現実的な家計状況を把握し、必要な対策を講じることで、育休期間を安心して過ごすための基盤を築きましょう。
配偶者控除、配偶者特別控除の有利な選択とは?
育休中の配偶者の所得額に応じて、「配偶者控除」と「配偶者特別控除」のどちらを適用するかを適切に選択することが、世帯全体の税負担を最適化する上で重要です。
配偶者控除は、控除を受ける配偶者の合計所得金額が48万円以下の場合に適用されます。一方、配偶者特別控除は、配偶者の合計所得金額が48万円を超え、133万円以下の場合に適用され、所得金額に応じて控除額が段階的に減少します。育児休業給付金は非課税所得ですが、給与所得など他の所得がある場合は、その合計額で判断します。
たとえば、育休中に一時的にアルバイトをして所得が発生した場合、その所得額が48万円を超えるかどうかで適用される控除が変わります。48万円を超えても133万円以下であれば配偶者特別控除が受けられますが、控除額は段階的に減っていきます。
ご自身の配偶者の所得状況を正確に把握し、所得税と住民税の両面から、どの控除が最も有利になるかを慎重に検討することが大切です。複雑に感じる場合は、税務署や税理士、後述するFPに相談することをおすすめします。
FPに相談するメリット
育休中の税金や社会保険料、家計管理は複雑で、個々の家庭状況によって最適な対策は異なります。そのような時、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談することは、大きなメリットがあります。
FPは、個別のライフプランや家計状況を総合的に分析し、育休中の収入減に対応した家計の見直し、将来を見据えた貯蓄計画、そして配偶者控除・配偶者特別控除の最適な選択など、具体的なアドバイスを提供してくれます。
例えば、「育休中にパートをする場合、所得はいくらまでなら税金が増えないか」「育休明けの住民税の負担増にどう備えるか」「子どもの教育費を見据えた長期的な家計計画を立てたい」といった具体的な悩みに、専門的な知見から回答を得られます。
FPを選ぶ際は、育児世帯や税金・社会保険に関する知識が豊富な人を選ぶと良いでしょう。初回無料相談を実施しているFPも多いので、まずは気軽に相談してみることを検討してみてください。専門家の客観的な視点とアドバイスは、育休中の経済的な不安を解消し、より安心して子育てに専念するための大きな助けとなるはずです。
まとめ:育休中の配偶者控除、デメリットを理解して賢く乗り切ろう
育児休業中の配偶者控除は、世帯全体の税負担を軽減する有効な制度ですが、その適用には思わぬデメリットが潜んでいることを理解することが重要です。特に、住民税の均等割や将来の住民税負担増、そして育休手当が非課税であることと控除計算との関係性は、多くの人が見落としがちなポイントでした。
この記事で解説したように、育休中の収入状況によっては、配偶者控除の適用が必ずしも手取りの増加に直結しないケースや、翌年度の住民税負担が増加する可能性も考えられます。これらのデメリットを回避・軽減するためには、ご自身の状況に応じた収入・支出のシミュレーションを行い、配偶者控除と配偶者特別控除のどちらが有利かを慎重に判断することが大切です。
もし複雑な計算や判断に迷う場合は、ファイナンシャルプランナー(FP)などの専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、ご家庭に最適な税金・社会保険料対策を講じ、育休期間中の経済的な不安を解消し、安心して子育てに専念できるでしょう。育休中の配偶者控除について正しく理解し、賢く制度を活用してください。